中小企業の夏季ボーナスに関する民間2社の調査をまとめてみた

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日本経済団体連合会(経団連)が6月末に発表した「2023年夏季賞与・一時金 大手企業業種別妥結状況(加重平均)」の第1回集計分では、大手121社の夏季ボーナス平均額は95万6027円で前年度比3.91%増だった。大手企業の夏季ボーナスが増える中、中小企業の実態はどうなのか。民間企業2社の調査の一部をまとめてみた。

エン・ジャパンは6月21日、従業員数300名以下の企業の人事担当者を対象にした「夏季賞与」についてアンケート調査を発表した。調査対象は同社が運営する人事向け情報サイト「人事のミカタ」を利用する従業員数300名以下の企業で、調査期間は5月2日-30日。インターネットによるアンケートを行い、374社から回答を得た。

夏季賞与を「支給予定企業」は83%にのぼり、昨年より6ポイント増加した。さらに「支給予定企業」に対して昨年(2022年)と支給額の変動があるか聞いた問いでは、全体で「賞与支給額が変わらない」が50%で最多、「増額予定(35%)」、「減額予定(11%)」だった。

(夏季賞与を支給するかを聞いた問い、出典:エン・ジャパン)
(出典:エン・ジャパン)

「増額予定」と回答した企業に対して、増額する理由を聞いた問い(複数回答)では、「ベースアップ(基本給の増加)の影響」が56%で最多、「業績が好調(43%)」、「社員の意欲向上(36%)」と続いた。

【図3】夏季賞与を「増額予定」と回答した企業に伺います。増額する理由をお教えください。(複数回答可)
(夏季賞与を「増額予定」と回答した企業に増額する理由を聞いた問い<複数回答>、出典:エン・ジャパン)

一方で「減額予定」と回答した企業に減額理由を聞いた問い(複数回答)では、「業績不振」が74%で最多、「新型コロナの影響(24%)」が続いた。


クラウドシステムや会計税務ソフトウェアを提供するフリーウェイジャパン(東京都中央区)は、6月15日に中小企業/零細企業の従業員と代表取締役を対象とした「2023年度 夏のボーナス実態調査」を発表した。調査は5月16日-22日に行い、調査方法はインターネットリサーチだった。調査対象は中小企業/零細企業の従業員140人、代表取締役115人。

経営者に対して夏のボーナスの支給予定について聞いたところ、「支給予定あり/支給済み」が31.3%で、昨年度の調査結果と比較して11.7ポイントの減少となった。「支給予定無し」は33.9%、「未定」が8.7%だった。

(夏のボーナスの支給予定はあるか?またはすでに支給しているかを聞いた問い、出典:フリーウェイジャパン)

ボーナスを支給予定/支給済みの企業に対して、昨年度と比較した支給額の増減について聞いたところ、「全体的に増加した・増加する」が44.4%で最多。「全体的に減少した・減少する」は16.7%、「変わらない」が38.9%であった。

(昨年度と比較した支給額の増減について聞いた問い、出典:フリーウェイジャパン)

【ユニークアイズ解説】上記2社の調査は方法や対象者が異なるため、傾向をつかむことは難しいが、エン・ジャパンの調査では、「賞与支給企業は約8割で昨年度より増加。ただ、半数の企業は賞与支給額は変わらない」という結果になり、フリーウェイジャパンの調査では、「賞与支給企業は約3割で、昨年度より減少。支給額については、4割の企業が増加」との結果だった。大手企業の夏季ボーナスが増え、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行し、国内景気が本格的に回復していくという期待が高まる中でも、中小企業を取り巻く環境は「人手不足」や「材料価格や電気代などの高騰」など経営課題も多いのも事実だ。ただ、中小企業で特に深刻な「人手不足」を解消するためにも、賃上げや賞与支給をしっかり実行し、従業員を確保しながら、利益を生み出していく良いサイクルを回していくことも重要であるだろう。

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