人事評価制度と売上の相関性は?(2022年版中小企業白書の統計データを抜粋してみた⑬)

統計・調査記事
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毎年、経済産業省中小企業庁から発行される中小企業白書。2022年版の白書は表紙から参考文献などを含めると590ページに及ぶ。そこで、製造業に関係する統計データを、製造業に関係する者が参考にしやすいように抜粋して、数回に分けて紹介する。第13回目は人事評価制度についてまとめた。

【ユニークアイズサマリー】従業員数が多いほど、人事評価制度を導入している企業が多い。人事評価制度を導入している企業ほど、売上の増加率が高く、さらに評価制度を定期的に見直しを行っている企業ほど売上増加率が高いとの結果となっている。一方で、人事評価制度を設けていない理由は小規模な企業ほど「経営者が全従業員の状況を把握している」割合が高い。規模が大きくなるにつれ、「運用が困難」の割合が高かった。

小規模ほど経営者が従業員の状況を把握できるが、従業員側からすると評価制度(明確な評価基準)があったほうが、モチベーションアップにつながる可能性も高い。運用が困難という側面もあるが、SaaS型(サービスとしてのソフトウエア)で、UI/UXに優れた人事評価システムも多くあり、そのようなデジタル活用もポイントの一つと言えるだろう。

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※以下、本文中の文章は「中小企業白書 2022」から一部抜粋したもの。
※本記事の図はすべて「中小企業白書 2022」から抜粋しているが、元データの参照元は図表内に記載されている。

従業員規模別に見た、人事評価制度の有無

従業員の仕事に対する意欲や能力を引き出すためには、能力開発に取り組むだけでなく、企業の特性に応じた人事評価制度や賃金制度を整備したり、福利厚生施策を実施したりするなど、体系的に人事施策を実施することも重要である。ここでは、人事評価制度、賃金制度、福利厚生施策について、中小企業の取組実態を見ていく。

①人事評価制度

第2-2-36図は、従業員規模別に、人事評価制度の有無について見たものである。従業員5~20人の企業では、人事評価制度があるのは4割未満であるのに対し、101 人以上の企業では9割程度となっており、企業規模による差異が大きいことが分かる

(出典:中小企業白書 2022)

従業員規模別に見た、導入している人事評価の手法

第2-2-37図は、従業員規模別に、導入している人事評価制度の手法について見たものである。半数以上の企業で、「目標管理制度」が導入されている。また、「360度評価」や「コンピテンシー評価制度」といった比較的新しい評価手法についても一定程度導入されていることが分かる。

(出典:中小企業白書 2022)

従業員規模別及び人事評価制度の有無別に見た、売上高増加率(中央値)

第2-2-38図は、従業員規模別及び人事評価制度の有無別に、売上高増加率について見たものである。いずれの従業員規模においても、人事評価制度がある企業の方が、売上高増加率が高いことが分かる。一般的に、人事評価制度は、従業員の配置や処遇の基準になるだけでなく、企業のビジョンや経営方針の浸透、適切なフィードバックによる従業員の育成などにも効果があるといわれているが、企業の成長性の面から見ても、人事評価制度を導入することの重要性が示唆される。ただし、人事評価制度は、導入すればよいというものではなく、導入後に、適切に整備・運用し、公正な評価を行うことが必要であり、こうした観点も忘れてはならない。

(出典:中小企業白書 2022)

人事評価制度の見直し状況別に見た、売上高増加率(中央値)

また、第2-2-39図は、人事評価制度の見直し状況別に、売上高増加率について見たものであ

る。人事評価制度を定期的に見直している企業では、売上高増加率が高く、10年以上見直していない企業では、特に低いことが分かる。企業の成長に当たっては、人事評価制度を導入するだけでなく、外部環境や内部環境の変化に合わせて制度を見直していくことが重要である。

(出典:中小企業白書 2022)

従業員規模別に見た、人事評価制度を設けていない理由

第2-2-40図は、従業員規模別に、人事評価制度を設けていない理由について見たものである。従業員規模が小さい企業では、「従業員が少なく、経営者が全従業員の状況を把握しているため」の割合が高い。一方で、規模が大きい企業では、「制度を設けても運用が困難であるため」の割合が高い。自社単独で人事評価制度を導入・運用することが難しい場合は、支援機関やコンサルタントなども活用しながら、自社に適した人事評価制度を定着させていくことが有益である。

(出典:中小企業白書 2022)
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