10月の企業倒産、注目の倒産動向は? 帝国データバンク調べ

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帝国データバンクが9日に発表した、10月の企業倒産件数は790件(前年同月594件、同比33.0%増)だった。2023年1-10月の累計件数は6918件で、すでに2022年通年(6376件)を上回った。概況とともに、注目すべき倒産動向をみていく。

(出典:帝国データバンク)

10月の倒産件数(790件)は、2023年で2番目に多い件数となり、18ヵ月連続で前年同月を上回った。業種別では、全7業種で前年同月を上回った。「サービス業」が187件(前年同月比34.5%増)で最も多く、「小売業」が165件(同26.0%増)、「建設業」が162件(67.0%増)で続いた。「建設業」は10月としては9年ぶりに160件を超えて今年最多を記録し、全体の件数を押し上げた。

(出典:帝国データバンク)

倒産の主因別では、「販売不振」が622件(同38.8%増)で最も多く、全体の78.7%(対前年同月3.3ポイント増)を占めた。「売掛金回収難」などを含めた「不況型倒産」の合計は635件(同39.6%増)となった。

業歴別の倒産件数では、「30年以上」が248件(同22.8%増)で最も多く、全体の31.4%(対前年同月2.6ポイント減)を占めた。このうち、老舗企業(業歴100年以上)の倒産は11件(同57.1%増)発生し、3カ月連続で前年同月を上回った。

(出典:帝国データバンク)

同社の発表資料の中で、注目の倒産動向として紹介しているのは、ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産、人手不足倒産、後継者難倒産、物価高(インフレ)倒産だ。

「ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産」は、10月に58件(同52.6%増)発生した。2023年1-10月累計では527件となり、前年同期(320件)の約1.6倍に増加した。また、「不良債権(焦げ付き)」に相当するコロナ融資喪失総額は推計で約630億9700万円にのぼり、国民一人あたり約500円の負担が発生している計算になるという。

(出典:帝国データバンク)

人手不足倒産は、10月に29件(同107.1%増)発生した。前年同月から倍増し、過去最多の2023年4月に次ぐ高水準となった。業種別では、「建設業」(77件)が最多で、職人不足やそれに伴う外注費負担の増加による倒産が目立つという。

(出典:帝国データバンク)

後継者難倒産は、10月に45件(同19.6%減)発生した。5カ月ぶりに前年同月を下回ったものの、このペースで推移すれば、2023年通年の件数は550件前後になり、年間での最多件数を更新するとみられるという。

(出典:帝国データバンク)

物価高(インフレ)倒産は、2023年10月に86件(同109.8%増)発生した。2023年4月(75件)以来、6カ月ぶりに最多件数を更新した。要因別では、「人件費」の増加によるものが1-10月累計では94件と、すでに2022年通年(31件)の3倍を超えている。

(出典:帝国データバンク)

帝国データバンクは今後の見通しについて、「企業倒産は18カ月連続で前年同月を上回っているものの、リーマン・ショック(2008年)時の年間1万件を超える『倒産急増』の局面までには至らず、件数自体はコロナ禍前の2019年以前の水準にとどまる見通しである。ゼロゼロ融資や助成金などによって倒産が抑制された状態からの反動増が足元の連続増加の要因とみられるが、これら支援策によって過剰債務の状態に陥っている中小企業は少なくない」と分析する。

さらに「これから年末にかけては、増加する資金需要に対して新たな資金調達が難しい「過剰債務」企業が事業継続をあきらめるケースが増えると想定される。社会に大きな混乱を招くことなく、経済の新陳代謝を進めながら、企業の再生や収益改善を後押しする。日本全体でこの難題に取り組むべき時が、今まさに訪れている」と指摘している。

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