中小製造業の経営層に聞いた。材料価格、電気料金上昇分は価格転嫁できているのか?

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中小企業が材料価格の高騰や電気料金の上昇に対する価格転嫁に苦慮している。エネルギー価格の高騰に伴う物流費などの値上がりに加え、円安による輸入コスト増などが挙げられ、筆者が11月以降に取材した中小企業(製造業)の経営層(10人程度)に聞くと、仕入れるほぼすべての材料が値上げをしていると回答した。その中で、「材料価格の値上げ分は製品価格に上乗せしてお願いしている」との声が多く聞かれた一方で、電気代や工具代などのいわゆる間接費の上昇分に関しては、値上げ分に上乗せできていないとの声が多く聞かれた。さらに数年前に受注し、進行中の公共案件などは、値上げが難しく、苦慮している。

記録的な円安に加え、ロシアによるウクライナ侵攻などによるエネルギー価格の上昇、新型コロナウイルスの影響によるサプライチェーンの分断など、一つをとっても大きな課題が同時に起こっている。そのため、材料価格の高騰などは個社の問題ではなく、社会全体の問題として捉えられている。そうした背景もあり、以前に比べ「材料高騰分の価格転嫁は依頼しやすくなった」(都内中小製造業、社長)との声も聞かれた。自社ブランド品やオーダーメイド品など、自社が決定権を持って価格を決められる製品や都度見積をする製品については価格交渉がしやすい一方で、加工を主に請けている別の企業からは、「(価格の見直しを)お願いをしているが厳しい面もある」(都内中小製造業、経営層)と取引先との力関係によっては苦慮している印象だ。さらに公共事業案件では「2、3年掛けて予算を執行する場合もあり、例えば3年前に受注したものを、現在施工している場合は、価格転嫁するのは難しい」(都内中小製造業、社長)との声も聞かれた。

その中で、電気代や工具代などのいわゆる間接費の上昇分に関しては、製品の値上げ分に上乗せできていないとの声が多く聞かれた。帝国データバンクが12月7日に発表した「電気料金値上げに関する企業の実態アンケート」によると電気料金の総額が1年前と比べて増加した企業は86.6%(中小企業は87.7%)で、料金は平均で28.7%増という結果だった。さらに「電気料金の増加分を販売価格やサービス料金にどの程度転嫁できているか」の問いでは、全く転嫁できていない企業は70.4%に上り、(増加分を)全て価格転嫁できている企業は2.2%に留まった。電気料金の増加分に対する販売価格等への転嫁割合を示す「価格転嫁率」は9.9%と 1割未満に留まり、これは電気料金が100円増加した場合に9.9円しか販売価格等に反映できていないことを示しているという。

企業によっては、原価低減のため工程改善や仕入先の多角化の検討など対策を講じている。材料価格の高騰などによる価格転嫁は、社会全体の問題として捉えられており、「お願い」できる環境になってきている。ただ、電気料金の上昇分に関しては、「個別に算出していないため、価格転嫁は難しい」(都内中小製造業、社長)との声もあり、なかなかできていないのが現状だ。別の視点では政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」の実現のためにも、電気量(CO2排出量)の見える化が重要になってくる。ただ、そのためには多少なりとも設備投資が必要となるだろう。いまだに収束していない新型コロナウイルスや円安、ロシアによるウクライナ侵攻など先を見通すことが難しい経済情勢の中、難しいかじ取りを強いられる。


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