脱炭素社会の進展、マイナス影響がプラス影響を上回る  帝国データバンク調べ

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帝国データバンクは、「“脱炭素社会”の企業への影響調査(2023年)」を22日に発表した。脱炭素社会の進展が自社の事業に「プラスの影響」があるとした企業は14.1%だった一方で、「マイナスの影響」は17.3%となり、マイナス影響と答えた企業が上回った。従業員数別でみても規模が小さくなるほど、プラス影響と回答する企業の割合が少なくなる傾向にある結果だった。

帝国データバンクが7月18-31日に調査を実施し、有効回答企業数は1万1,265社だった。脱炭素社会に関する調査は、2021年6月、2022年7月に続いて今回で3回目。

脱炭素社会の進展は今後、自社の事業にどのような影響があると考えるかを尋ねた問いでは、「プラスの影響」があるとした企業は14.1%で、過去に実施した同様の調査から進展はなかった(2021年:14.8%、2022年:14.0%)。一方、「マイナスの影響」とした企業は17.3%で、2022年(19.5%)からは2.2ポイント低下したが、依然としてマイナス影響がプラス影響を上回る結果だった。「影響はない」(33.8%)、「分からない」(34.9%)は、合わせて7割近くを占め、「脱炭素社会の進展に実感が乏しい状況といえる」という。

(出典:帝国データバンク)

主な業種別では、「プラスの影響」があるとした業種は、「再生資源卸売」が29.4%で最も高かった。次いで、「農・林・水産」(25.2%)、「家電・情報機器小売」(25.0%)が続いた。

一方、「マイナスの影響」 では、ガソリンスタンドなどを含む「専門商品小売」が49.8%で最も高く、全体(17.3%)を32.5ポイント上回った。次いで、「輸送用機械・器具製造」(38.1%)、「自動車・同部品小売」(36.9%)、「運輸・倉庫」(33.0%)が続き、自動車関連業種での「マイナスの影響」が目立った。

(出典:帝国データバンク)

従業員数別では、「1,000人超」で「プラスの影響」が35.0%を占め、規模が大きくなるほど「プラスの影響」が高くなった。一方、規模が小さくなるほど「影響はない」「分からない」の割合が高まる傾向がみられた。

(出典:帝国データバンク)

同調査では「『マイナスの影響』が『プラスの影響』を上回り、さらにそれ以上に『影響はない』、『分からない』が上回る結果から、脱炭素社会の進展に対する実感が乏しい企業が多く、各社への直接的な影響が出るのはしばらく先になりそうだ」と分析。さらに「地球環境に関心の高い海外企業を中心にサプライチェーン全体で「脱炭素経営」に取り組む姿勢が広まるなか、国内企業も大企業にとどまらず、脱炭素への取り組みが求められ、中小企業に至るまでのすそ野の広い仕組みづくりが急がれる」と指摘する。

【ユニークアイズ解説】「政府が2050年までにカーボンニュートラルを目指す」と当時の菅義偉首相が宣言をしたのが2021年の10月。当時、筆者は新聞記者として自動車部品メーカーを中心に取材していたが、特に電気自動車(EV)では必要がなくなるエンジン部品のメーカーでは相当の危機感が感じられ、新規事業を模索している印象だった。そういった流れは今も続いているだろう。

また中小企業においても、実際に取材をしていてもまだ取り組みをしている企業は少ない印象だ。実際に話を聞いてみても、CO2排出量を計測する・算出することは新たな出費が必要になる場合はあり、なかなか企業としてプラスとしてとらえきれていないのではないか。地球温暖化対策と言われれば、真っ向から反対する人は少ないだろう。ただ、特に体力が乏しい中小企業にとっては、物価高や賃上げなど、まず乗り越えなければいけない壁も多いのも事実だろう。

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