賃上げ・賞与支給を実施している企業ほど、売上増加率が高いというデータ(2022年版中小企業白書の統計データを抜粋してみた⑭)

統計・調査記事
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毎年、経済産業省中小企業庁から発行される中小企業白書。2022年版の白書は表紙から参考文献などを含めると590ページに及ぶ。そこで、製造業に関係する統計データを、製造業に関係する者が参考にしやすいように抜粋して、数回に分けて紹介する。第14回目は賃金制度と福利厚生についてまとめた。

【ユニークアイズサマリー】賃金制度は職能給を中心に年齢給や職務給を組み合わせている企業が多い。直近5年間の賃上げに関するデータを見ると製造業では80%以上の企業が賃上げをしている。同じく直近5年間の賞与・一時金についても製造業では約87%の企業で実施している。賃上げと賞与・一時金の支給している企業の方が、していない企業を比べて売上増加率が高い結果となった。
厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査の概況」のよると、企業規模別に賃金は、男女計で、大企業339.7千円、中企業299.8千円、小企業 279.9千円となっている。男女別では男性の方が賃金格差があった。
そうしたデータをみると、多くの企業で賃上げや賞与の支給などを行っている。それに比例して売上が増加している企業も多い。ただ、大企業と中小企業では、賃金差はあり、中小企業ほど、大卒・高卒問わずに人材確保に苦労しているとも聞く。賃上げや賞与支給などを継続的に行い、好循環のサイクルを回りながら、福利厚生の充実や事業面の強みを外部にアピールすることで、良い人材の確保のポイントの一つになるのではないか。

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※以下、本文中の文章は「中小企業白書 2022」から一部抜粋したもの。
※本記事の図はすべて「中小企業白書 2022」から抜粋しているが、元データの参照元は図表内に記載されている。

従業員規模別に見た、導入している賃金制度・給与体系

第2-2-41図は、従業員規模別に、導入している賃金制度・給与体系について見たものである。いずれの規模においても、職能給を中心に年齢給や職務給を組み合わせながら、賃金制度を整備している様子が見て取れる。一方で、規模が小さい企業を中心に「明確な賃金制度・給与体系は定めていない」とする企業が一定程度存在することが分かる明確な賃金制度・給与体系を構築することは、従業員のモチベーションや公平感を高めると考えられ、明確な給与体系や賃金制度を定めていない企業においては、一度検討してみることも有益であろう。

(出典:中小企業白書 2022)

業種別に見た、直近5 年間の賃上げの実施状況

第2-2-42図は、業種別に、直近5年間の賃上げの実施状況について見たものである。これを見ると、業種に関わらず、おおむね8割程度の企業で賃上げを実施したことが分かる

(出典:中小企業白書 2022)

従業員規模別に見た、直近5 年間の賞与・一時金の支給状況

第2-2-43図は、業種別に、直近5年間の賞与・一時金の支給状況について見たものである。毎年支給した企業の割合は、卸売業や建設業では9割超となっている一方で、情報通信業では8割程度となっており、業種により多少の差異が見られるが、多くの企業で賞与・一時金の支給を実施していることが分かる。

(出典:中小企業白書 2022)

賃上げ実施及び賞与・⼀時⾦の⽀給状況別、売上⾼増加率の水準

第2-2-44図は、直近5年間の賃上げ実施及び賞与・一時金の支給状況別に、売上高増加率の水準について見たものである。賃上げを実施している企業や賞与・一時金の支給を実施している企業の方が、売上高増加率が高いことが分かる。どちらが起点となるかという論点はあるものの、賃上げや賞与・一時金の支給を実施し、従業員のモチベーションを高め、企業が成長し、更に賃上げや賞与・一時金の支給を実施するという好循環を作り出すことが重要である。

(出典:中小企業白書 2022)

実施している福利厚生施策

第2-2-45図は、実施している福利厚生施策について見たものである。「慶弔休暇」や「慶弔見舞金」、「育児休業」が上位となっており、多くの企業で実施していることが分かる。また、「特にない」とする企業は少なく、ほとんどの企業では何らかの福利厚生施策を実施していることが分かる。

(出典:中小企業白書 2022)

従業員の仕事に対する意欲別に見た、福利厚生施策を実施する背景

第2-2-46図は、従業員の仕事に対する意欲別に、福利厚生施策を実施する背景について見たものである。従業員の仕事に対する意欲に関わらず、「従業員のモチベーション向上」の割合が8割程度と最も高い。また、「従業員の心身の健康維持」については、従業員の仕事に対する意欲による差異が大きく、従業員が意欲的である企業では6割超となっている。近年、ワーク・ライフ・バランスの概念が浸透してきており、こうした観点に配慮して福利厚生施策を検討することで、従業員の仕事に対する意欲が高まる可能性が示唆される

(出典:中小企業白書 2022)
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