【中小企業インタビュー】マテリアルが取り組む人材育成と技術継承 マテリアル 取締役 細貝龍之介氏(後編)

インタビュー
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究極の下請けを目指すー。そう目標を掲げるのは、モノづくりの集積地である東京都大田区でアルミニウムの精密加工や材料販売を行うマテリアル(東京都大田区)だ。創業者で現社長の細貝淳一氏の長男として今後を担う細貝龍之介取締役に、同社の強みや材料価格の高騰・新型コロナの影響、今後の展望を前編で、後編では人材育成・技能継承について聞いた。(前編は12月13日に公開済み)

ー人材育成・技術継承の取り組みを教えてください。

当社の現場職は30代半ばから40代が主力だ。その次の世代が20代前半と、多少年齢差が開いている。製造業では比較的年齢層が若い会社であるが、技術の継承は当社でも課題であった。一人しかできない技術というのは、会社としては頼れる部分もあるが、逆に技術継承ができていないとその技術は絶たれてしまう。「一人でしかできない作業をなくす」ということをテーマに、まずは技術部門のトップである取締役の須賀が持つ技術を、今後を担うであろう30代後半の工場長に技術継承を行った。

ー具体的にどのようにして技術継承に取り組んだのですか?

「マンツーマンで時間を掛けて実機で教える」ということに取り組んだ。当社はマシニングセンタ(MC)を27台保有しているが、現場の社員は14人。単純計算で1人で2台を担当しなければいけない中で、1台を2人が付きっきりで作業することは稼働率は若干落ちてしまう。ただ、会社の将来のことを考えると大事なことであり、優先度を高めて実施した。この技能伝承の取り組みは、大田区からも表彰された。そういった技術は工場長から中堅社員、若手社員へOJTで伝えていく形を取っている。

「大田の工匠 技術・技能継承」受賞式の様子(同社提供)

ー新入社員・若手社員の教育はいかがでしょうか。

かつての中途採用だけでなく、この5年ほどは新卒も採用できるようになっているが、どうしても辞める子がいる。新卒社員が1年で辞めてしまうと、送り出す学校側への印象も悪くなる。そうなると新卒社員が採用できなくなり、その先には会社の存続に関わる。新卒社員の退職は一般の社員にはあまり関係のない事と思うかもしれないが、そもそも会社が存続しなければ、その社員にも給料が払えなくなる。社長からも「今だけでなく、未来のことを考えて欲しい」というような言葉もあり、数年後には事業継承するくらいの覚悟で社員の意識改革を行っていった。

以前は新入社員の教育体制がきちんと確立されていなかった。現場では「背中を見て覚える」とまでは言わないが、放任主義と思われるような面もあった。(比較的今の若い人は)大人しいイメージで、学校を卒業してすぐの新入社員と現場の熟練者では言葉遣いのギャップなどもあったと思う。

そこで取り組んだのは「甘やかし教育」だ。19年入社からの新卒社員に対して「優しい言葉づかい」や「丁寧に仕事を教える」ことなどを全社的に意識をした。それと同時に教育体制も整えることで、19年〜22年で計5人新卒採用したが現時点で全員辞めずに勤務している。

マテリアル技術塾の様子(同社提供)

「マテリアル技術塾(前編で紹介)」の開催や資格取得の支援など、会社としては社員の技術力向上を全力で支援する。それが企業としての競争力を高めることにも繋がる。逆に、もし当社から転職をすることになったとしても、総合的な技術力が備わっているので、他社でも通用すると自負している。


【編集後記】前職時(新聞社在籍時)、大田区の中小製造業と言えば、真っ先に「マテリアル」の名前が聞くことが多かった。そういう意味では同社が目指す「アルミの切削や部品発注だったら、マテリアル」と言われる日も近いかもしれない。同社の特徴的な取り組みは先進的なことが多く、本インタビュー記事では書ききれない。また時期を改めて記事掲載したいと思う。


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