中小企業におけるビジネスと人権(2022年版中小企業白書の統計データを抜粋してみた㉟)

統計・調査記事
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毎年、経済産業省中小企業庁から発行される中小企業白書。2022年版の白書は表紙から参考文献などを含めると590ページに及ぶ。そこで、統計データを、中小企業に関係する者が参考にしやすいように抜粋して、回数を分けて紹介する。第35回目はビジネスと人権についてまとめた。

ユニークアイズサマリー:今回はビジネスと人権についてである。企業活動における人権尊重の重要性の認識状況では、7割以上の企業が認識しており、従業員規模が大きいほど、認識している割合が高い。続いて「人権方針(人権を尊重する責任を果たすというコミットメントを示す方針)の策定状況」では、301人以上の企業では3割以上で既に策定している。一方で、50人以下の企業で策定している企業の割合がは1割以下にとどまる。販売先からの人権尊重に関する取り組みの働きかけや要請の有無については、多くの企業が要請を受けていない。

欧米を中心にサプライチェーンを含む人権尊重の取組を求める動きが進んでいるが、国内中小企業では、まだ浸透していない。「人権尊重の重要性は認識しているが、明文化する意味やメリットが分からない」といった状況と推測する。政府はビジネスと人権についての特設サイトなどを設置しており、海外と間接的でも取引がある企業は、同サイトなどで海外の動向などを情報収集するのも良いかもしれない。

※以下、本文中の文章は「中小企業白書 2022」から一部抜粋したもの。
※本記事の図はすべて「中小企業白書 2022」から抜粋しているが、元データの参照元は図表内に記載されている。

企業活動における人権尊重の重要性の認識状況(従業員規模別)

第2-2-148図は、従業員規模別に中小企業の企業活動における人権尊重の認識状況を示したものである。従業員規模が大きい企業ほど、企業活動における人権尊重を認識している割合が高くなっており、いずれの従業員規模においても7割超の企業が「認識している」と回答していることが分かる。

(出典:中小企業白書 2022)

人権方針の策定状況(従業員規模別)

第2-2-149図は、従業員規模別に人権方針の策定状況を示したものである。301人以上の企業では3割以上で既に策定している一方で、50人以下の企業においては策定している企業の割合が1割以下にとどまっていることが分かる。

(出典:中小企業白書 2022)

人権デュー・ディリジェンスの実施状況(従業員規模別)

第2-2-150図は、従業員規模別に人権DDの実施状況を示したものである。301人以上の企業では2割以上が少なくとも自社について既に実施している一方で、50人以下の企業においては1割以下にとどまっていることが分かる。
※ここでいう人権デュー・ディリジェンス(人権DD)とは、「企業活動における人権への負の影響を特定し、それを予防、軽減させ、情報発信すること」を指す。

(出典:中小企業白書 2022)

販売先からの人権尊重に関する取組の働きかけや要請の有無(従業員規模別)

続いて、第2-2-151図は、販売先からの人権尊重に関する取組の働きかけや要請の有無を、従業員規模別に示したものである。これを見ると、301人以上の企業において、「ある」と回答した企業の割合が1割を超えているものの、実際に販売先から働きかけや要請まで受けている企業は一部の企業に限られていることが分かる。多くの企業において取引先から要請を受けていないこともあり、人権尊重に関する取組を実施する必要性に迫られておらず、人権方針の策定などに至っていないものと推察される。

(出典:中小企業白書 2022)
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