【中小企業インタビュー】町工場の技術が作り出す肉専用 超極厚鉄板「MAJIN」の底力 石道鋼板 石原佑太取締役(後編)

インタビュー
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石道鋼板(東京都江戸川区、石原芳弘社長)が経営改革を推進している。取引先の拡充やキャッシュフローの改善を図り、2022年には江戸川区産業賞の優秀賞を受賞。昨今の材料価格の高騰に対する価格転嫁もほぼできているという。インタビューの前編(2月27日公開)では経営全般について、後編では同社が新規事業として商品化したアウトドア用鉄板などの「MAJIN」ブランドの開発経緯や今後の展望を石原佑太取締役に聞いた。

ーアウトドア用鉄板の開発経緯を教えてください。

まず、厚板の認知を広めたいという思いが根本にある。厚板と当社の技術力に加えて、BtoCで戦える分野を考え、アウトドアに着目した。アウトドアは多くの鋼材が使用されて、業界としても成長している。厚板×当社の技術力×BtoC(新規事業)×アウトドア(成長市場)の掛け算でアウトドア用の鉄板の開発に至った。

あえて個人のお客様(BtoC)をターゲットにした理由は、対法人になると単価のところが業界の共通認識で高い・安いが、ある程度決められてしまう。一方、個人向けだとその共通認識の概念がないため、良い商品であれば商品が評価され、最終的に利益も得やすい。私が入社した2018年から構想を練り始めて、企画段階から東京都中小企業振興公社の「新サービス創出スクール」や「事業化チャレンジ道場」などにも参加し、2021年に商品化にこぎつけた。「MAJIN ー肉専用 超極厚鉄板ー」という商品名で、19mm、12mm、10mmの3種類の違う厚さの鉄板を展開している。販売実績は累計1,500枚ほどになり、好評を得ている。

MAJIN ー肉専用 超極厚鉄板ー(同社提供)

他社に対しての優位性やコスト感は?

鉄板に厚みを持たせることで蓄熱量が格段に高くなる。そうすると、食材に均一に火がしっかりと伝わり、特にお肉は専門店レベルにおいしく焼き上げることができる。

価格帯は、通常の市販されている鉄板と比べると約2倍くらいの値段となっている。ただ、厚みは3倍以上となるため、展示会に出展しても「結構安いね」と言われることが多く、高いと言われたことはない。

注文ごとに切断加工から梱包まで全て自社工場内で完結しているのも特徴だ。職人が1枚1枚ガス溶断やバリ取りなどを行い、町工場の技術が詰まっている。

切断加工から梱包まで全て自社工場内で完結(同社提供)

今後の展望は?

MAJINブランドのラインナップを増やしていきたい。現在はアウトドア用のグリルパンを開発中。今回のグリルパンは協力会社の技術を活用しながら、開発している。特徴は本格的な料理の仕上がりを実現し、かつ1つで5通り調理が可能な点だ。今後もアウトドアを共通項にMAJINブランドのラインナップや認知度を高めていきたい。


【編集後記】石原取締役は新卒でヤフー株式会社に入社、12年勤めた後に石道鋼板に。時期は決まっていないが、このままいけば同社の3代目社長を継承予定だという。キャッシュフローの改善や新規事業など様々な改革を行っているが、これからの事業展開にも注目だ。(鎌田正雄)


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