【中小企業インタビュー】材料の価格転嫁はほぼ100%!コスト削減効果は約2,000万円!江戸川区の町工場が取り組む経営改革とは? 石道鋼板 石原佑太取締役(前編)

インタビュー
この記事は約5分で読めます。

石道鋼板(東京都江戸川区、石原芳弘社長)が経営改革を推進している。取引先の拡充やキャッシュフローの改善を図り、2022年には江戸川区産業賞の優秀賞を受賞。昨今の材料価格の高騰に対する価格転嫁もほぼできているという。インタビューの前編では経営全般について、後編では同社が新規事業として商品化したアウトドア用鉄板「MAJIN」ブランドの開発経緯や今後の展望を石原佑太取締役に聞いた。

ーまず簡単な会社紹介をお願いします。

祖父が1966年に創業し、今年で57年目になる。現在は父が社長、私が取締役という立場で従業員が11名の会社だ。業種としては鉄鋼業に属しており、厚板鉄板のガス切断加工や卸売りを主に行っている。鋼材の厚みが6mm以上が厚板と定義されていて、6mmから150mmの厚板を常時在庫し、お客様から注文があったら、短納期で出荷している。四角形など単純な形状に切断加工する「寸法切り」と複雑な形状の切断加工「型切り」の2種類の加工を行っている。当社は材料屋と呼ばれるポジションで、納入先は金属加工業者さんや同業者が多い。また、新規事業としてはBtoC向けにアウトドア用の鉄板のメーカーとして製造販売を行っている。

ー会社(業務上)の強みは?

一番はスピードだ。例えば長野県にある大口のお客様(納入先)に対しては、昼までに注文を受けた分に対しては、当日出荷する体制が出来ている。ほかの関東近郊の納入先に対しては、翌日出荷対応をしている。見積回答も社長が直接対応しているため、基本的には30分以内で回答している。

-新型コロナウイルスや材料価格の高騰の影響やそれに対する対策は?

新型コロナ影響だと、売上ベースで2018年度(同社は3月決算)を100とした場合、19・20年度は80、21年度が120、22年度が100に戻ってきたイメージだ。売上が戻ってきている理由としては、製造業全体としても言えることだが、コロナ禍で工場などの製造が止まった分の反動と考えている。

材料価格の高騰に対しては、材料が上がった分の価格交渉をしている。ほぼ100%価格転嫁できている。取引先とは長年の信頼関係を築けている(値上げをお願いできる環境)と、当社の強みでもあるスピードというところでの当社が替えの効かない会社と認識してもらっているのも理由かと思う。

ー材料価格だけでなく、電気代などのいわゆる間接費も上がっています。

ガス溶断をしているのでガス料金、切断する際には酸素も使用するので酸素、もちろん電気代も総じて世の中と同じように上がっている。そういった間接費に関しては、「工賃」の部分で転嫁させてもらっている。先ほど「寸法切り」と「型切り」の2種類の加工を行っていると紹介したが、「型切り」は、形状が複雑なため、材料費にプラスした「工賃」を計上しており、そこに間接費の上昇分を上乗せしている。

工場内を紹介する石原取締役

ー江戸川区産業賞で優良企業に選出されました。その理由はどのようなことが考えられますか?

1つ目は取引先の拡充、2つ目はキャッシュフローの改善、最後はデジタル化による省力化の3つが評価されたと認識している。

取引先の拡充については、企業のホームページの「お問い合わせフォーム」にダイレクトメールのような形で、関東近郊の金属加工業者など約800社にアプローチして、拡充を図った。さらに展示会への定期的な出展、公的機関のマッチングサービスなども積極的に活用している。

キャッシュフローの改善については、鉄板の仕入れ方法の変更を行った。従来は、商社から鉄板を定期購入していたが、都度購入に変更した。都度購入にすると費用がかさむと思うかもしれないが、定期購入の場合は月の材料購入費が例えば300万円だとする。毎月300万円の材料費が出ていく一方で、ある月は100万円分の材料しか使わなかったということもある。そういった事もあり、必要分だけ材料を都度購入する方法に変更、在庫を抑制しキャッシュフローの改善を図った。仕入れ方法の変更以外にも、借入金を低金利の会社に借り換えたり、リース品や保険などで不要なものを解約するなど行った。細かなことでは会社にある自動販売機の設置会社の見直しも行った。

合計で年間2,000万円前後のコスト削減効果は出ていると思う。

デジタル化による省力化については、主にバックオフィスからデジタル化を始めた。今までは、タイムカードで出退勤を管理して、従業員への給料は手渡しだった。そこで勤怠アプリを導入して、そのデータを基に自動で振込ができるように改善した。今後は売上システムや見積システムなど、バックオフィスのクラウド化を進めていき、最終的には工場のデジタル化も進めていく。

ー今後の展望は?

会社としては、厚板のガス溶断が一番の強みとなるため、そこに集中・研ぎ澄ましていく。多くのお客様に商品を届けられるように、インターネットを活用したり、ウェブ上で24時間見積が取れるようなシステムなどを考える。ターゲットは、(現時点で取引が多い)金属加工や同業にこだわらずに、異業種・個人などにもとにかく厚板を軸に広げていく考えだ。

社員(職人)の年長者は70歳を超えている。そのため、少数精鋭で今の2倍以上のパフォーマンスを出すということにフォーカスしていきたい。設備投資も行いながら、職人が80・90歳まで働ける環境を作っていきたい。


インタビューの後編「【中小企業インタビュー】町工場の技術が作り出す肉専用 超極厚鉄板『MAJIN』の底力 石道鋼板 石原佑太取締役(後編)」は2月28日公開予定です。


PAGE TOP