2022年度の倒産件数は6,880件で3年ぶりに増加。急増した倒産傾向は? 東京商工リサーチ調べ

統計・調査記事
この記事は約5分で読めます。

東京商工リサーチは10日、2022年度の全国企業倒産件数(負債額1,000万円以上)が前年度比15.0%増の6,880件だったと発表した。コロナ禍の資金繰り支援策などで、記録的な低水準を続けてきたが、3年ぶりに前年度を上回る数字となった。同社のデータを基に、全体的な傾向を振り返るとともに個別の要因・傾向についても紐解いていく。

全10業種で前年度を上回る

倒産企業のうち、99.94%が中小企業だった。産業別でも14年ぶりに全10産業で前年度を上回った。サービス業他が2,245件(前年度比13.8%増)で最多、3年ぶりに前年度を上回り、2年ぶりに2,000件台となった。燃料価格の高騰などの影響を受ける運輸業は351件(同43.8%増)で、2年連続で前年度を上回り、7年ぶりに300件台。製造業は802件で同24.1%増だった。

(東京商工リサーチのデータを基に当社作成)

同社は「人手不足」や「新型コロナ関連」倒産・破たんなどの個別要因による件数・データも発表している。22年度の新型コロナウイルス関連破たんは、前年度から4割増の2,757件で、人手不足関連の倒産は79件でコロナ禍で最多を記録した。円安関連倒産は35件で同7倍となった。新型コロナ、物価高、ロシアによるウクライナ侵攻など、さまざまなネガティブ要因がある中、企業は難しいかじ取りを迫られている。

新型コロナ破たんは1.4倍増に急増

22年度の「新型コロナ」関連の破たん(負債1,000万円未満を含む)は、2,757件で前年度の1,938件から1.4倍増と急増した。都道府県別では、東京都が530件で最多。大阪府276県、愛知県が154件と続いた。前年度との増加率の比較では、鹿児島県が約4倍増の287.5%増。次いで、長崎県の同208.3%増、大分県の同188.8%増と、九州3県が上位を上位を占めた。産業別ではサービス業他が1,087件で最多だった。

同リポートでは「アフターコロナの時期に差し掛かってもコロナ破たんは増勢を強め、収束が見通せない。2023年度は物価高や人手不足などコストアップも重なり、複合型のコロナ破たんを中心に、さらに増加する可能性が高い」と指摘する。

(東京商工リサーチのデータを基に当社作成)

人手不足が加速。人件費高騰も足かせに

22年度の「人手不足」関連倒産(負債1,000万円以上)は79件で前年度比51.9%増だった。コロナ禍では20年度(74件)を超えて最多を記録した。主な要因では「従業員退職」が33件(同50.0%増)、「求人難」が29件(同20.8%増)とこの2要因で約8割に達する。「人件費高騰」が要因の倒産も17件(同183.3%増)と急激に増加した。産業別ではサービス業他が最多で29件(同26.0%増)。建設業14件(同27.2%増)、運輸業13件(同160.0%増)と続き、7産業で前年度を上回った。
同リポートでは「本格的な事業の再開で人手不足が深刻さを増し、人材確保のため賃上げが避けられなくなっている。だが、過剰債務を抱えて、業績回復が遅れた中小企業には賃上げは容易ではない。こうした二律背反の状況に追い込まれた中小企業を中心に、『人手不足』関連倒産が増勢を強めている」と指摘している。

後継者難倒産は代表者の死亡が5割以上を占める

22年度の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は409件で5年連続で増加し、調査開始(13年度)以降で最多を更新した。要因別にみると、「代表者の死亡」が211件(構成比51.5%)、「体調不良」が139件(同33.9%)で、この2要因で「後継者難」倒産の8割超(同85.5%)を占めた。産業別では、サービス業他が最多で91件(前年度比5.2%減)。建設業84件(同4.5%減)、製造業82件(同46.4%増)と続いた。2022年の経営者の平均年齢は、63.02歳(前年62.77歳)で上昇が続いている。

「中小・零細企業ほど人的・資金的な制約もあり、事業承継や後継者育成への取り組みが進んでいない。倒産や廃業は、地域雇用の受け皿の消失や人口減などで地域経済の衰退を招きかねない。国や自治体、金融機関がポストコロナに向けて事業再生支援に傾注する動きもあるが、中小・零細企業の事業再生や事業承継への取り組みも重要になってくる」と同リポートで指摘している。

(東京商工リサーチのデータを基に当社作成)

円安関連倒産は7倍に

急激な円安に見舞われた22年度の「円安」関連倒産は35件(前年度比600.0%増)で、前年度の7倍に急増した。3月30日(17時時点)の外国為替相場は、1ドル=132.41円と一時期に比べて落ち着いている。しかし、3月の円安関連倒産は6件発生。服飾雑貨販売、印刷業、酪農業、特殊品専門クリーニング業など、さまざまな業種で発生した。円安に伴う商品や資材、飼料などの価格上昇が資金繰りに影響を及ぼしている。

運送業者は八方塞がりの状態?

燃料費の高騰や2024年問題がクローズアップされる「道路貨物運送業」の22年度の倒産(負債1,000万円以上)は263件(前年度比43.7%増)と前年度の1.4倍に増加した。件数が200件を超えたのは、15年度以来7年ぶりだった。23年4月1日から月60時間超の時間外割増賃金率が引き上げられ、さらに24年4月1日からは時間外労働の上限規制が適用される「2024年問題」が控えている中で、「中小・零細規模の運送業者は、荷主との力関係や燃料高、道路貨物運送業などで八方塞がりの状態にある。根本的な運送業界の構造改革をどこまで実現できるか。大手から中小・零細事業者まで改革案が網羅できるのか。物流停滞の危機まで残された時間は少ない」と同リポートでは言及している。

PAGE TOP