就任経緯別に見た中小企業経営者の特徴(2022年版中小企業白書の統計データを抜粋してみた㉖)

統計・調査記事
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毎年、経済産業省中小企業庁から発行される中小企業白書。2022年版の白書は表紙から参考文献などを含めると590ページに及ぶ。そこで、統計データを、中小企業に関係する者が参考にしやすいように抜粋して、回数を分けて紹介する。第26回目は中小企業経営者に関する特徴その1についてまとめた。

【ユニークアイズサマリー】今回は中小企業経営者の特徴(その1)をまとめたものである。経営者の就任経緯別に就任した年齢をみると「創業者」は、30代以下が6割超と若い年代で経営者に就任する割合が高い一方、「内部昇格」では、50代以上で経営者に就任する割合が高い。就任前の他社企業での勤務経験は、「創業者」は他企業での勤務経験がある者が9割を超えた。一方、「同族経営」や「内部昇格」では、他企業での勤務経験がない経営者の割合が他より高い。就任前に経験した職域では「営業」を経験した割合が全体的に最も高かった。就任動機は、「創業者」が「自己実現」が最も高く、「同族承継」や「内部昇格」では、「従業員の雇用や取引先との関係を維持するため」や「会社の歴史を守るため」が上位だった。

当たり前であるが「創業者」と「同族経営」や「内部昇格」では、経営者になるまでの経緯や動機が違うという結果となった。筆者が単なる取材以上に内部に入り込んだ企業の例では、学生時代に起業したスタートアップ企業の「創業者」は「他企業の勤務経験がない分、自分が分からない分野は得意な人に任す経営」をして、社内がうまく回っている印象だった。一方で他企業を経験した「同族経営」の経営者(3代目)は、「自分の色に会社を染めようとして全部顔を突っ込む経営」をして社内がうまく回っていない印象だった。2つの企業を見ていた時期も業種も異なるが、どちらも共通していたのは「新しいことに自らチャレンジをする」という点で、その見ていた時期は売上が伸びていた。

※以下、本文中の文章は「中小企業白書 2022」から一部抜粋したもの。
※本記事の図はすべて「中小企業白書 2022」から抜粋しているが、元データの参照元は図表内に記載されている。

就任経緯別に見た、経営者に就任した年齢

第2-2-104図は、経営者の就任経緯別に、経営者に就任した年齢について見たものである。「創業者」は、30代以下が6割超と若い年代で経営者に就任する割合が高い一方、「内部昇格」や「親会社や取引先からの派遣・招へい、買収、その他」では、50代以上で経営者に就任する割合が高いことが分かる。

(出典:中小企業白書 2022)

就任経緯別に見た、経営者就任前の他社企業での勤務経験

第2-2-105図は、経営者の就任経緯別に、就任前の他社企業での勤務経験について見たものである。「創業者」や「親会社や取引先からの派遣・招へい、買収、その他」では、他社企業で勤務経験がある者が9割超と高い。一方で、「同族承継」や「内部昇格」では、他社企業での勤務経験がない経営者の割合が比較的高いことが分かる。

(出典:中小企業白書 2022)

就任時の年齢別に見た、経営者就任前に経験した職域

第2-2-106図は、経営者就任時の年齢別に、経営者就任前に経験した職域について見たものである。就任時の年齢に関わらず、「営業」を経験している割合が最も高い。一方、「経営幹部」は、就任時の年齢による差異が大きく、30代以下では2割程度であるのに対し、60代以上では5割を超えている。経営者就任時の年齢が高い経営者は、一定程度経営経験を積んだ後に就任している様子がうかがえる。

(出典:中小企業白書 2022)

就任経緯別に見た、経営者に就任した動機

続いて、第2-2-107図は、経営者の就任経緯別に、経営者に就任した動機について見たものである。「創業者」では、「自己実現のため」や「自分の裁量で自由に仕事をするため」が上位となっている。「同族承継」や「内部昇格」では、「従業員の雇用や取引先との関係を維持するため」や「会社の歴史を守るため」が上位となっており、これまでの企業活動を次世代につなぐ動機が上位となっている。また、「親会社や取引先からの派遣・招へい、買収、その他」では、「自身の知識や経験をいかすため」が最も高い。

(出典:中小企業白書 2022)

経営者就任時の動機と現在、会社を経営する動機

第2-2-108図は、経営者就任時の動機と現在、会社を経営する動機について見たものである。経営者就任時と現在との差異について見ると、「従業員の雇用や取引先との関係を維持するため」や「社会に貢献するため」の割合が20ポイント以上高くなっている。経営者としてのキャリアを重ねる中で、従業員や取引先といったステークホルダーや社会に対する意識が高まっている様子がうかがえる。

(出典:中小企業白書 2022)
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