増加する企業倒産。その特徴的な傾向は? 民間2社調べ

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企業倒産が増加している。2020−21年は持続化給付金やコロナ融資(ゼロゼロ融資)など行政の手厚い支援があり、倒産件数は歴史的な低水準となった。ただ、22年はコロナ融資の返済も本格化し始めたことに加え、円安や物価高も重なり企業倒産件数は増加に転じた。23年に入ってからはさらに拍車がかかり、倒産件数が増加している状況だ。

帝国データバンク(TDB)と東京商工リサーチ(TSR)が発表した5月の倒産件数はTDBが694件(前年同月比34.2%増)、TSRが706件(同34.7%)だった。TDBの調査では13ヵ月連続で、TSRでは14ヵ月連続で前年同月を上回った。

(出典:帝国データバンク)

倒産件数が増加している中で、特徴的な倒産傾向をみていく。TDBは8日に「物価高倒産動向調査査(2023年5月)」を発表した。5月の物価高倒産は67件で、3か月連続の60件越えとなった。23年1-5月の累計は312件となり、前年同期(62件)の約5倍となった。

(出典:帝国データバンク)

23年に発生した312件を業種別にみると、「建設業」(67 件)がトップ。次いで「製造業」(66件)、「運輸業」(44件)、「小売業」(43件)、「卸売業」(41件)と続いた。倒産の要因別では「原材料」が 30.7%で最多となり、特に食品やアパレル関連を中心に「製造業」の倒産が目立った。次いで、「エネルギーコスト」(25.6%)、「包装・資材」(22.4%)と続き、「運輸業」や「建設業」で多くみられた。同調査では「電気料金などエネルギー価格の上昇が続いているため、今後も物価上昇に収益が追いつかず倒産に至る可能性がある。引き続き『物価高倒産』は大幅な減少に転じることなく、高い水準で推移するだろう」と指摘する。

TSRは13日に「人手不足倒産」の件数を発表した。5月の人手不足関連倒産は12件で前年同期(6件)の2倍に急増した。内訳は、求人難が7件、人件費高騰が3件、従業員退職が2件だった。
23年1-5月の累計では56件となり、3年ぶりに50件台となった。特徴的なのが前年同期には発生がなかった「人件費高騰」が21件と急増。TSRは「経済活動が活発になるにつれて、『人手不足』が顕在化している。収益性が低く、資金余力が乏しい中小企業では、なかなか賃上げを実施することは難しい。そのため、人材流出が避けられず、業績回復が遅れることで『人手不足』関連倒産の増加に拍車をかける可能性が高まっている」と警鐘を鳴らす。

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