【中小企業インタビュー】製造業の街・大田区のコンクールで最優秀賞を受賞した企業の実力は? テック大洋工業 鳥潟社長(前編)

インタビュー
この記事は約5分で読めます。

テック大洋工業(東京都大田区、鳥潟佑樹社長)は、10月に「第34回大田区中小企業新製品・新技術コンクール」で最優秀賞を受賞した。同社は金属加工を得意として、動物園の檻などの特注品を手掛ける。さらに9月には代替わり(社長交代)し、新たな経営体制となった。9月に社長に就任した鳥潟佑樹社長に、コンクールで受賞した製品概要や材料費の高騰対策、今後の展望についてを前編で、後編では社長に就任してからの新たな取り組みなどを聞いた。

最優秀賞を受賞

ーまず簡単に会社紹介をお願いします。

1948年に創業した会社で金属加工をコア技術とした工場をもっており製造する製品は公園施設、歩廊デッキや動物園の檻、バスシェルターなどの都市環境施設である。企画からデザイン、設計、構造計算、製造、施工、メンテナンスを一貫して行っている。公共事業案件がほぼ100%であり、ほとんどの製品はオーダーメイドというのも特徴だ。標準品では対応できないものを当社では対応している。10月に公開された第34回大田区中小企業新製品・新技術コンクールで「最優秀賞」を受賞した製品もオーダーメイドから生まれた。拠点は大田区内にある本社と2事業所(静岡県三島市、秋田県大館市)の3拠点体制で、従業員数は約40人である。

ー最優秀賞を受賞した製品はどんなものですか?

「独立電源式大型動物の屋外自動給餌装置」で、今年の初めに「よこはま動物園(ズーラシア)」に納品した。今回の対象動物はゾウで、ゾウの給餌装置だ。ゾウへの給餌を自動化して、さらに外部電源を必要としない太陽光発電の電力で稼働させたのが特徴だ。このような独立電源式で大型動物のアタックに耐える自動給餌装置は「国内だけでなく、海外でも初めての製品」だと思っている。

独立電源式大型動物の屋外自動給餌装置(同社提供)

ゾウの常同行動を減少

ー装置を開発した経緯を教えてください。

今回納めた製品の特徴として、一つ目はゾウの福祉のためという視点。野生のゾウは1日16時間くらい餌を探す動物と言われているが、動物園だと決まった時間で決まった場所にエサが与えられるため、ゾウが暇を持て余してしまう。本製品はタイマーで1日10回、給餌の時間を不規則に設定できる。また給餌方法にも工夫をして、構造的に簡単にエサが取れない構造にしている。採餌にかかる時間を増やすことで動物の異常行動である、常に同じ行動をする「常同行動」を減少することができる。

二つ目は飼育員の負担・危険の軽減だ。ゾウとなるとエサやりだけでも重労働となる。本製品は、装置の最大容量として1日あたり500kg(50kgを10回)可能なため、例えば朝1回セットするだけで給餌準備は完了する。さらに、給餌時の動物と飼育員の接触をなるべく減らすことができ、飼育員の危険の減少、間接飼育を推進できる。

三つ目は太陽光発電の電力を使用しているということ。外部電源を使用しないということは、まず設置場所を選ばない。外部電源が必要な場合、動物と電線の接触を防がなければならない。そのため、電線を地中に通すこともある。そうなると大規模な工事になり、その分費用もかかる。本製品は電線を必要とせずに、1日で設置可能なため、休園時など短期間で設置が可能だ。さらに外部電源が不必要なため、電力を抑えることができ、環境に適合した製品ということでSDGsの推進などにも寄与できる。

そのほか、ゾウに攻撃されても壊れない構造にするなど、プロトタイプを何回か製作し、納めながら、改良を重ねて製品化した。

内製化や仕入れ先の多角化を検討

ー話を変えて、経営環境についてお聞きします。新型コロナウイルスや材料費の高騰などの影響はどう対応してますか?

公共事業案件がほぼ100%ということもあり、新型コロナウイルスの影響は、当社の業界はあまり受けていない。材料費の高騰に関しては、当社も影響を受けている。高騰分は価格に転嫁できている場合もあるが、できていないのもある。特に公共事業案件は、2、3年掛けて予算を執行する場合もあり、例えば3年前に受注したものを、現在施工している場合は価格転嫁するのは難しい。

ーその中で、どのような対策をしていますか?

案件ごとの収支チェックなどは以前より気にするようになった。また協力工場に頼んでいた業務で、内製化できるものは内製化する取り組みを進めている。材料の仕入れの面でも、既存の仕入先以外にほかの仕入先がないか?など海外まで含め、様々な可能性を検討している。

工場内の写真(同社提供)

付加価値がある新製品開発を

ー今後の展望は?

今回受賞した製品はソーラーパネルを利用した装置と当社が得意とする動物舎製造技術を組み合わせた製品だ。今まで培ってきた当社の製品群と新たなモノを組み合わせると付加価値がある製品を作れることを証明できた。今後はそのような電力を利用した新製品の開発にも力を入れて進めていく。

また、少し変わった自社製品として、防錆塗料である「エコストコート(有機金属不動態化塗装)」が好調だ。同商品はあらゆる金属の防錆に効果がある塗装システムで、鉛など有害重金属類を含まないため、環境にも優しい。大手機器メーカーにも近年採用されている。当社も含め、鉄の素材を扱っている会社は「サビ」に対して、昔から頭を悩ませてきた。その課題を解決するために自社開発したもので、今後も訴求していきたい。

エコストコートを塗装したシェルター(同社提供)


インタビューの後編は「【中小企業インタビュー】9月に就任した新社長がまず取り組んだこととは? テック大洋工業 鳥潟社長(後編)」のタイトルで12月20日に掲載予定です。


PAGE TOP