これを実践すれば、会社業績が良くなるはず? 中小企業白書にある統計を抜粋してみた(その7)

統計・調査記事
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毎年、経済産業省・中小企業庁から発行される中小企業白書。今年は4月28日に閣議決定され公表された。各種メディアでは解説記事などはすでに出ているが、ユニークアイズでは、中小企業白書にある統計の中で「〇〇を実践している企業は〇〇を行っていない企業と比べて売上高の増加率が高い」といったポジティブな統計を抜粋していく。ここに記載があることを実践すれば「統計的に会社業績がよくなるはず?」であると願い、7回目の今回は「経営者からの権限委譲と売上高増加率」の関係についてのデータを紹介する(毎週水曜日更新)。

※以下、【ユニークアイズ解説】の項目以外の文章は「2023年度版 中小企業白書」から一部抜粋したもの。
※本記事の図はすべて「2023年版 中小企業白書」から抜粋しているが、元データの参照元は図表内に記載されている。

経営者からの権限委譲の状況別に見た、売上高増加率の水準

【ユニークアイズ解説】統計データを紹介する前に、まずパート(中小企業白書第2部_第1章_第3節_3. ②経営者からの権限委譲の取組)の概要を説明する。社員が能力を発揮しやすい環境を整備することが、会社の戦略実行の推進に寄与すると考えられている。その具体的な取り組みとして、経営者からの権限委譲が挙げられる。権限委譲状況を聞いた問いでは、約6割の企業が経営者から権限委譲を進めていると回答。従業員規模別にみると、従業員数の増加に応じて、経営者からの権限委譲が進んでいる傾向にある。具体的な業務別にみると、「資金調達方針」は、経営者に権限が集中したが、「新規事業に関する方針決定」、「既存事業に関する方針決定」、「予算額」、「人事評価」、「人材の採用」、「人員の配置」は、経営層まで権限委譲が進んでいる傾向にある。また、「物品の購入」、「既存仕入先・販売先との取引継続」、「新規仕入先・販売先の開拓」、「業務目標の設定・管理」、「新たな製品・商品・サービスの開発」は、部長・課長クラスや主任・係長クラスまで権限委譲が進んでいる傾向がある。そうした状況を踏まえ、以下が「経営者からの権限委譲の状況別に見た、売上高増加率の水準」のデータである。


第2-1-70図は、経営者からの権限委譲の状況別に、売上高増加率の水準(中央値)を見たものである。これを見ると経営者からの権限委譲を進めている企業の方が、進めていない企業に比べて、売上高増加率の水準が高いことが分かる。今回の調査だけで一概にはいえないものの、権限委譲を進めたことが自律的な社員の増加や社員からの改善提案の増加につながっており、こうした状況下で既存事業の拡大や新規事業の創出に取り組んだことで、売上高の増加を実現している可能性が考えられる。

(出典:2023年度版 中小企業白書)

【ユニークアイズ解説】同白書では、「成長企業は、従業員の増加とともに、経営者からの権限
委譲を進めている傾向があることを確認した」とした一方で、「権限委譲を進めるだけでは、必ずしも社員の自律性の向上などにつながるとは限らない」とも指摘。そこで権限委譲を行うと同時に「経営理念・ビジョンの共有などを通じて、従業員の動きに統一感や一貫性を持たせることも重要」としている。

先に紹介した記事で、「右腕人材」や「変革人材」は外部からの人材確保より、内部で育成した割合が高かった。そうした将来の幹部候補を内部で育成するためにも、経営者からの社員への権限委譲は重要と言えよう。

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