これを実践すれば、会社業績が良くなるはず? 中小企業白書にある統計を抜粋してみた(まとめ)

統計・調査記事
この記事は約6分で読めます。

毎年、経済産業省・中小企業庁から発行される中小企業白書。今年は4月28日に閣議決定され公表された。各種メディアでは解説記事などはすでに出ているが、ユニークアイズでは、中小企業白書にある統計の中で「〇〇を実践している企業は〇〇を行っていない企業と比べて売上高の増加率が高い」といったポジティブな統計を抜粋して7回にわたり、掲載した。今回は解説もまじえ、7回の統計を振り返る。

※以下、【ユニークアイズ解説】の項目以外の文章は「2023年度版 中小企業白書」から一部抜粋したもの。
※本記事の図はすべて「2023年版 中小企業白書」から抜粋しているが、元データの参照元は図表内に記載されている。

ユニークアイズ解説

今回紹介した統計は「競合退社が少ない市場の方が売上高増加率が高い」や「リスキリングの機会を提供している企業の方が売上高増加率が高い」、「右腕人材や変革人材がいた方が、売上高増加率が高い」など、「当たり前と言えば当たり前」の統計であるが、肌感覚ではなく数字(統計)で確認することは重要である。さらにこの統計で見えてきたのが、内部の人材戦略・育成の重要性だ。実際に「右腕人材」や「変革人材」は、内部で育成したという回答が外部からの確保より多かった。外部から有能な人材を雇い入れれば、右腕人材の育成やリスキリングなども問題は解決できるかもしれないが、中小企業は人手不足が深刻化していると言われ、採用活動も厳しい状況だ。実際に日本商工会議所と東京商工会議所が3月に発表した調査では、中小企業の64.3%が「人手が不足している」と回答し、昨年同時期から3.6ポイント増加している。

以前の記事でも紹介したが、経済産業省では「中小企業・小規模事業者人手不足対応ガイドライン」を3年ぶりに改定して6月22日に公表している。同ガイドラインは「⼈材戦略を検討するための3ステップ」として、課題の洗い出しから、検討・実行までのプロセスを紹介している。こうしたガイドラインや事例集を参考にするのも良いのでは。

今回の中小企業白書内に同様の統計(〇〇をした方が売上増加率が高い)がないため、「デジタル化」については触れていない。デジタル化による売上への効果は分からないが、例えばデジタル化により稼働状況の見える化や設備の効率化をすることで売上高増加するかもしれない。さらにHRテックなどが人材戦略・育成に役立つかもしえない。そういったデジタル化も重要である一方で、やはり「人」特に「内部人材」の人材戦略・育成が重要ということが読み取れるのではないだろうか。

経営戦略策定時に選定した市場の特徴別に見た、売上高増加率と付加価値額増加率の水準

(出典:2023年度版 中小企業白書)

この第2-1-10図は、経営戦略策定時に選定した市場の特徴別に、売上高増加率と付加価値額増加率の水準(中央値)を見たものである。「競合他社が少ない市場」を選択した企業は、「競合他社が多い市場」を選択した企業よりも、売上高増加率と付加価値額増加率の水準がいずれも高いことが分かり、一概には言えないものの、競合他社が少ない市場への参入や市場の創出が企業の成長につながる可能性が示唆される。

競合他社が多い市場を選定した理由別に、付加価値額増加率の水準

(出典:2023年度版 中小企業白書)

第2-1-12図は、競合他社が多い市場を選定した理由別に、付加価値額増加率の水準(中央値)の差を見たものである。競業他社が多い市場を選定しながらも成長している企業は存在する。その企業は競合他社の多い市場に参入し成長を実現するためには、標準化を通じた効率化が重要である可能性が示唆される。ということがデータで表れている。

経営者のリスキリングの取組状況別に見た、売上高増加率の水準(中央値)

(出典:2023年度版 中小企業白書)

第2-1-31図は、経営者のリスキリングの取組状況別に、売上高増加率の水準(中央値)を見たものである。経営者がリスキリングに取り組んでいる企業は、取り組んでいない企業に比べて、売上高増加率の水準が高く、経営者が自身のリスキリングに取り組むことは、自社の成長のために重要であることが示唆される。

役員・社員に対するリスキリングの機会の提供状況別に見た、売上高増加率の水準(中央値)

(出典:2023年度版 中小企業白書)

第2-1-35 図は、役員・社員に対するリスキリングの機会の提供状況別に、売上高増加率の水準(中央値)を見たものである。役員・社員に対してリスキリングの機会を提供している企業は、提供していない企業に比べて、売上高増加率の水準が高い。役員・社員に対してリスキリングの機会を提供することは、自社の成長のために重要であることが示唆される。

人材戦略の策定状況別に見た、従業員数増加率の水準

(出典:2023年度版 中小企業白書)

第2-1-37図は、人材戦略の策定状況別に、従業員数増加率の水準(中央値)を見たものである。これを見ると、人材戦略を「策定した」企業は、「策定しなかった」企業と比較して、従業員数増加率の水準が高く、人材の確保に向けて、人材戦略を策定することの重要性が示唆される。

経営戦略と人材戦略の紐づけ状況別に、売上高増加率の水準

(出典:2023年度版 中小企業白書)

第2-1-39図は、経営戦略と人材戦略の紐づけ状況別に、売上高増加率の水準(中央値)を見たものである。経営戦略と人材戦略を「紐づけた」企業は、「紐づけなかった」企業と比較して、売上高増加率の水準が高く、経営戦略と人材戦略を一体的に構想することにより、戦略の実行に必要な人材の確保が進み、結果として業績の向上にもつながっている可能性が示唆される。

右腕人材の有無別に、売上高増加率の水準

(出典:2023年度版 中小企業白書)

第2-1-43図は、右腕人材の有無別に、売上高増加率の水準(中央値)を見たものである。これを見ると、右腕人材が「いた」と回答した企業は、「いなかった」と回答した企業に比べて、売上高増加率の水準が高いことが分かる。右腕人材が成長のために重要な役割を果たしている可能性が示唆される。

変革人材の有無別に見た、売上高増加率の水準

(出典:2023年度版 中小企業白書)

第2-1-52図は、変革人材の有無別に、売上高増加率の水準(中央値)を見たものである。変革人材の経歴にかかわらず、「いた」と回答した企業は、「いなかった」と回答した企業と比較して、売上高増加率の水準が高いことが分かる。一概には言えないものの、変革人材が存在することにより、既存事業の拡大や新規事業の創出が進み、売上高の増加につながっている可能性が考えられる。

経営の透明性を高める取組の実施状況別に見た、売上高増加率の水準

(出典:2023年度版 中小企業白書)

第2-1-63図は、経営の透明性を高める取組の実施状況別に、売上高増加率の水準(中央値)を見たものである。これを見ると、経営の透明性を高める取組を実施している企業は、実施していない企業に比べて、売上高増加率の水準が高いことが分かる。

経営者からの権限委譲の状況別に見た、売上高増加率の水準

(出典:2023年度版 中小企業白書)

第2-1-70図は、経営者からの権限委譲の状況別に、売上高増加率の水準(中央値)を見たものである。経営者からの権限委譲を進めている企業の方が、進めていない企業に比べて、売上高増加率の水準が高い。権限委譲を進めたことが自律的な社員の増加や社員からの改善提案の増加につながっており、こうした状況下で既存事業の拡大や新規事業の創出に取り組んだことで、売上高の増加を実現している可能性が考えられる。

PAGE TOP