多くの中小企業が外部人材活用に踏み切れず…ただ、売上増のメリットも(2022年版中小企業白書の統計データを抜粋してみた⑯)

統計・調査記事
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毎年、経済産業省中小企業庁から発行される中小企業白書。2022年版の白書は表紙から参考文献などを含めると590ページに及ぶ。そこで、製造業に関係する統計データを、製造業に関係する者が参考にしやすいように抜粋して、数回に分けて紹介する。第16回目は外部人材の活用についてまとめた。

【ユニークアイズサマリー】外部人材の活用をしている企業は、情報通信業では約6割、他の業種では2~3割程度にとどまる。外部人材を活用している企業ほど、売上高増加率が高い。外部人材活用の検討については、企業規模が小さい企業では、「営業・販売促進」の割合が相対的に高く、規模の大きい企業では「IT導入」や「新規事業開発」の割合が相対的に高い。外部人材活用の理由では、従業員規模が5~20人の企業では、「人手不足を補うため」の割合が特に高く、規模の大きい企業では、「専門的な技術やノウハウを活用するため」の割合が高い。外部人材活用への課題・障壁では、「フリーランスや副業人材の能力の見極め」が課題・障壁であるとする割合が最も高かった。

中小企業の人手不足が深刻化する中、外部人材の活用はその課題を解決する一つの選択肢となる。コロナ禍で「副業」が一般化していきているのも追い風だ。ただ、能力の見極めや契約条件の調整などの新たな業務も発生する。また中小企業ほど、人材の流動性が低いことが予想されるため、外部人材を受け入れる企業の従業員側の受け入れ体制の整備も重要なポイントといえるだろう。

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※以下、本文中の文章は「中小企業白書 2022」から一部抜粋したもの。
※本記事の図はすべて「中小企業白書 2022」から抜粋しているが、元データの参照元は図表内に記載されている。

業種別に見た、外部人材の活用意向

第2-2-52図は、業種別に、外部人材の活用意向について見たものである。情報通信業では外部人材を「既に活用している」企業の割合が高く、6割程度となっているが、そのほかの業種では2割から3割程度となっている。

(出典:中小企業白書 2022)

従業員規模別に見た、外部人材の活用を検討している分野

第2-2-53図は、従業員規模別に、外部人材を活用したい分野について見たものである。これを見ると、規模に関わらず、幅広い分野で外部人材の活用を望む様子が見て取れる。規模による差異について見ると、規模が小さい企業では「営業・販売促進」の割合が相対的に高く、規模の大きい企業では「IT導入」や「新規事業開発」の割合が相対的に高い

(出典:中小企業白書 2022)

従業員規模別に見た、外部人材の活用意向がある理由

第2-2-54図は、従業員規模別に、外部人材の活用意向がある理由について見たものである。規模に関わらず、「専門的な技術やノウハウを活用するため」や「人手不足を補うため」が上位となっている従業員規模が5〜20人の企業では、「人手不足を補うため」の割合が特に高く、社内の人的資源の不足への対応として、外部人材の活用を検討している企業が多いことが分かる。また、規模の大きい企業では、「専門的な技術やノウハウを活用するため」の割合が高く、社内にはない技術やノウハウの獲得のために外部人材の活用を検討している企業が多いことが分かる。

(出典:中小企業白書 2022)

外部人材の活用状況別に見た、売上高増加率(中央値)

第2-2-55図は、外部人材の活用状況別に、売上高増加率について見たものである。これを見ると、「既に活用している」企業では、特に売上高増加率が高いことが分かる。外部人材を活用することで、社内にはない専門的な技術やノウハウを獲得したり、人手不足による機会損失を防いだりすることで、企業の競争力が高まっている可能性が示唆される。

(出典:中小企業白書 2022)

外部人材の活用状況別、活用に当たっての課題・障壁

第2-2-56図は、外部人材の活用状況別に、活用に当たっての課題・障壁について見たものである。活用有無に関わらず、「フリーランスや副業人材の能力の見極め」が課題・障壁であるとする割合が最も高い。また、活用有無による差異について見ると、「活用したことはないが、活用してみたい」企業では、「フリーランスや副業人材との出会い・マッチング」や「労働条件や契約条件の調整」を、課題・障壁として挙げる割合が、20ポイント程度高いことが分かる。中小企業における外部人材の活用に当たっては、マッチング機会の充実や個別の条件の調整といった専門的な助言などの更なる支援が求められる。

(出典:中小企業白書 2022)
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