企業の価格転嫁は進んでいるのか? 帝国データバンク調べ

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帝国データバンクは28日、「価格転嫁に関する実態調査(2023年7月)」を発表した。価格転嫁率は43.6%で2022年12月から3.7ポイント改善に留まり、全く転嫁できていない企業も依然として1割を超える結果だった。さらに「値上げ難型」の物価高倒産は少なくとも23件(2023年1-7月)判明し、前年同期の12件に比べ倍増ペースで推移しているという。電気代などのエネルギー価格や材料費の高騰が止まらないなか、思うように企業の価格転嫁が進んでいない状況が浮き彫りになった。

(出典:帝国データバンク)

同調査で「自社の主な商品・サービスにおいて、コストの上昇分を販売価格やサービス料金にどの程度転嫁できているか」を聞いた問いでは、コストの上昇分に対して『多少なりとも価格転嫁できている』企業は 74.5%となった。その内訳をみると、「5割以上8割未満」が19.8%で最も高かった。以下、「2割未満」(19.0%)、「2割以上 5割未満」(16.8%)、「8割以上」(14.4%)と続いた。「10割すべて転嫁できている」企業は 4.5%だった。

(出典:帝国データバンク)

コスト上昇分に対する販売価格への転嫁度合いを示す「価格転嫁率」は43.6%で、コストが100円上昇した場合に43.6円しか販売価格に反映できていないことを示している。前回調査(39.9 円)より 3.7 円転嫁が進んだが、依然として6割弱のコストを企業が負担する状態が続いている。

価格転嫁率が高い業種では、「紙類・文具・書籍卸売」が65.7%でトップだった。次いで、「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」(64.3%)、「化学品卸売」(63.1%)が続いた。一方、低い業種では、一般病院や老人福祉事業といった「医療・福祉・保健衛生」(15.2%)が最も低く、映画・ビデオ制作業やパチンコホールなどを含む「娯楽サービス」(21.6%)や「リース・賃貸」(24.8%)、「農・林・水産」(25.6%)が続いた。

(出典:帝国データバンク)

調査の結果について同社は、「競合他社が多く価格が上げづらい業界では、自社の商品・サービスの価格の値上げによって、『取引企業や最終消費者の顧客離れを危惧し価格転嫁に踏み切れない』など声がある一方で、独自性のある商品販売により競合他社が少なく、価格転嫁しやすいと回答した企業もあり、より付加価値の高い商品・サービスを提供するための取り組みが必要となってきている。物価上昇に賃金が追いつかず消費の低迷が懸念されるなか、いかにコスト上昇と価格転嫁のバランスをとるかがより重要となってくる」と指摘している。

帝国データバンクが7月18-31日に調査を実施し、有効回答企業数は1万1,265社(うち中小企業・小規模企業は9,550社)だった。

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