中小企業経営者の情報収集手段は?(2022年版中小企業白書の統計データを抜粋してみた⑳)

統計・調査記事
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毎年、経済産業省中小企業庁から発行される中小企業白書。2022年版の白書は表紙から参考文献などを含めると590ページに及ぶ。そこで、統計データを、製造業を中心に中小企業に関係する者が参考にしやすいように抜粋して、回数を分けて紹介する。第20回目は事業環境の分析を踏まえた経営戦略の策定(外部環境に関する情報収集・分析状況)についてまとめた。

【ユニークアイズサマリー】今回は外部環境に関する情報収集・分析をどうしているかについてである。まず政治や経済などマクロ環境に関する情報は、各項目で8割前後の企業が情報収集を行っていた一方で、経営戦略に反映している割合は2割未満に留まっている。市場環境に関する情報収集・分析では「自社製品・サービスの市場動向」や「顧客の動向」を、経営戦略に反映していると回答した割合が3割を超えており、マクロ環境と比較し、情報収集・分析を行った上で、経営戦略に反映している様子が見て取れる。競合他社の情報収集・分析では、競合他社の収益性に関する情報収集の実施割合が低く、競合他社の情報収集において一定のハードルがある可能性がうかがえる。活用している外部環境の情報収集手段では。「日々の営業活動の中で収集」や「日常的にメディア媒体から収集」と回答した企業の割合が高かった。

「新型コロナウイルス感染症」「ロシアによるウクライナ侵攻」「物価高」「半導体不足」「脱炭素(カーボンニュートラル)」など外部環境に関するキーワードを上げればキリがないほどだ。そうした外部環境の影響を全く受けていない企業はほとんどいないだろう。変化の激しい時代だからこそ、特にアンテナを高く外部環境に関する情報収集・分析を行い、的確で迅速な経営判断が経営者には求められている。

※以下、本文中の文章は「中小企業白書 2022」から一部抜粋したもの。
※本記事の図はすべて「中小企業白書 2022」から抜粋しているが、元データの参照元は図表内に記載されている。

マクロ環境の情報収集・分析状況

外部環境に関する情報収集・分析状況自社を取り巻く外部環境は、法制度や規制の改正や金利などのマクロ環境に加え、顧客企業や仕入先の動向などの市場環境、競合他社の状況など多岐にわたる。第2-2-77図は、経営戦略の策定に際して行う政治(法規制、税制など)や経済(景気や経済成長、金利・為替・株価など)、社会(人口動態の変化など)、技術(新技術の開発や特許、フィンテック・AIなど)といったマクロ環境に関する情報収集・分析の状況を示したものである。これを見ると、いずれの項目も8割前後の企業において、情報収集を行っていることが分かる。一方で、経営戦略に反映している割合は2割未満にとどまっている。

(出典:中小企業白書 2022)

市場環境の情報収集・分析状況

自社を取り巻く外部環境について、ここでは自社製品の市場規模や成長性といった「自社製品・サービスの市場動向」、自社の製品・サービスを販売する「顧客の動向」、原材料や商品を購入する「仕入先の動向」、自社の属する業界の製品と同じ機能を持つような「代替製品の動向」、自社の属する業界への「潜在的な新規参入企業の動向」、の五つの市場環境について情報収集・分析状況を確認していく。第2-2-78図は、上記の市場環境に関する情報収集・分析の状況を見たものである。これを見ると、「自社製品・サービスの市場動向」や「顧客の動向」については、経営戦略に反映していると回答した割合が3割を超えており、マクロ環境と比較し、情報収集・分析を行った上で、経営戦略に反映している様子が見て取れる。一方で、「代替製品の動向」や「潜在的な新規参入企業の動向」については、経営戦略に反映できていると回答した割合が他の項目と比較して低くなっている。こうした項目について情報収集・分析を行う必要性が薄れている、又は必要性に気付いていない可能性が考えられる。

(出典:中小企業白書 2022)

競合他社の情報収集・分析状況

続いて、自社の属する業界の競合他社に関する情報収集・分析状況について確認する。第2-2-79図は、競合他社の市場シェアや収益性、今後の動向に関する情報収集・分析の状況を見たものである。自社製品・サービスの市場動向や、顧客・仕入先の動向と比べ、情報収集・分析を行い、経営戦略に反映させている企業の割合は少ない傾向にある。特に、競合他社の収益性に関する情報収集の実施割合が低く、競合他社となる企業情報の収集において一定のハードルがある可能性がうかがえる。

(出典:中小企業白書 2022)

活用している外部環境の情報収集手段

第2-2-80図は外部環境の情報収集に当たり活用している手段を見たものである。「日々の営業活動の中で収集」や「日常的にメディア媒体から収集」と回答した企業の割合が高くなっている一方、経営戦略の策定を目的とした情報収集を行っている企業の割合は1割程度と低くなっていることが分かる。

(出典:中小企業白書 2022)

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