中小企業経営者は経営知識・スキルを習得するために何を参考にしているのか?(2022年版中小企業白書の統計データを抜粋してみた㉙)

統計・調査記事
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毎年、経済産業省中小企業庁から発行される中小企業白書。2022年版の白書は表紙から参考文献などを含めると590ページに及ぶ。そこで、統計データを、中小企業に関係する者が参考にしやすいように抜粋して、回数を分けて紹介する。第29回目は経営者自身の経営力を高めるための学習・取組(その2)についてまとめた。

ユニークアイズサマリー:今回は経営者自身の学習などに対する取り組み(その2)である。経営に関する知識・スキルを習得するために経営者が実施している取組は、全体的に「専門書やビジネス書の読書」が一番割合が多く、その次に「有料・無料の経営者向けの研修やセミナーの受講」だった。また、学習した内容をすぐに経営や業務で実践している企業の方が売上増加率が高い。経営知識・スキルを習得するために有益な学習機会についてでは、「税理士やコンサルタント」や「業界団体や同業者・取引先とのネットワーク」、「金融機関」といった日頃の業務における関わりの中で、効果的に習得している割合が高い。

前の記事では6割超の中小経営者が学習時間は十分ではない。また、意図的に学習時間を確保している経営者(企業)が、していない企業より売上増加率は高い結果だった。そして今回は、学習した内容をすぐに経営などに反映している企業の方が売上増加率が高いと結果だった。学習時間を確保し、それを経営などに反映したほうが売り上げが伸びるという結果からも、まずは学習時間を確保するために、経営者自身の業務の見直しや効率化が必要と言えるだろう。

※以下、本文中の文章は「中小企業白書 2022」から一部抜粋したもの。
※本記事の図はすべて「中小企業白書 2022」から抜粋しているが、元データの参照元は図表内に記載されている。

経営方針別に見た、経営知識・スキルを習得するために直近5 年間に実施した取組

第2-2-117図は経営方針別に、経営に関する知識・スキルを習得するために経営者が直近5年間に実施した取組について見たものである。「売上拡大・利益拡大」といった前向きな経営方針を採っている経営者は、「専門誌やビジネス書の読書」や「無料の経営者向けの研修やセミナーの受講」を始め、積極的に経営に関する知識・スキルを習得するための取組を実施していることが分かる。一方で、経営方針が「売上拡大・利益拡大以外」である経営者の3割超が「特にない」としており、前向きな経営方針を採る経営者と比較すると、経営に関する学習に消極的である様子が見て取れる。

(出典:中小企業白書 2022)

経営に関する学習時間確保の状況別、学習の動機

第2-2-118図は、経営者の経営に関する学習時間確保の状況別に、学習の動機について見たものである。「不足する知識・スキルの習得」や「経営者としての責任感」は、学習時間確保の状況に関わらず、5割超となっている。また、学習時間確保の状況による差異について見ると、「先進的な知識・スキルの習得」や「具体的な経営課題の解決」は特に差異が大きく、学習意欲の高い経営者はこれらの動機により学習時間を確保している様子がうかがえる。

(出典:中小企業白書 2022)

学習の動機別に見た、経営知識・スキルを習得するために直近5 年間に実施した取組

第2-2-119図は、「先進的な知識・スキルの習得」と「具体的な経営課題の解決」を学習の動機としている経営者の学習内容について見たものである。「先進的な知識・スキルの習得」を動機としている経営者とそれ以外の動機としている経営者を比較すると、「専門誌やビジネス書の読書」は特に実施割合の差異が大きいことが分かる。また、「具体的な経営課題の解決」を動機としている経営者とそれ以外の動機としている経営者を比較すると、「自社の状況に応じたコンサルティングやコーチング」は特に実施割合の差異が大きい。

(出典:中小企業白書 2022)

学習内容の実践状況別、売上高増加率(中央値)

第2-2-120図は、学習内容の実践状況別に、売上高増加率について見たものである。これを見ると、経営者が学習で得た内容をすぐに経営・業務で実施している企業の方が、売上高増加率が高いことが分かる。経営者は、経営に関して学習するだけでなく、学習で得た内容をすぐに経営・業務で実践することが重要といえよう。

(出典:中小企業白書 2022)

経営知識・スキルを習得するために有益な学習機会

第2-2-121図は、経営に関する知識・スキルを習得するために有益な学習機会について見たものである。「税理士やコンサルタント」や「業界団体や同業者・取引先とのネットワーク」、「金融機関」といった日頃の業務における関わりの中で、経営に関する知識・スキルを効果的に習得している様子が見て取れる。また、「研修、セミナーを主催する民間企業」の割合も高く、専門的な学習機会が有益であるとする経営者も多いことが分かる。

(出典:中小企業白書 2022)

経営に関する学習をしない理由

第2-2-117図で見たとおり、意識的に経営に関する学習をせずに経営に当たっている経営者も一定数存在する。第2-2-122図は、経営に関する学習をしない理由について見たものである。これを見ると、「必要性を感じない」とする経営者が最も多く、過半数となっている。第2-2-115図や第2-2-120図で確認したとおり、経営者の学習状況と企業の成長性には一定の相関関係が見られる。学習機会の中で、顕在的な課題解決だけでなく、経営者自身も気がついていない潜在的な課題を認識することも想定され、現時点で必要性を感じていない経営者においても、一度立ち止まって自身の知識・スキルの状況を見直し、不足する分野や伸ばしたい分野について学習してみることも有益だろう。

(出典:中小企業白書 2022)
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