OJTとOFF-JTを行っている中小企業の割合は?(2022年版中小企業白書の統計データを抜粋してみた⑫)

統計・調査記事
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毎年、経済産業省中小企業庁から発行される中小企業白書。2022年版の白書は表紙から参考文献などを含めると590ページに及ぶ。そこで、製造業に関係する統計データを、製造業に関係する者が参考にしやすいように抜粋して、数回に分けて紹介する。第12回目は能力開発への意識と取組編その2(従業員の能力開発に関する取組)についてまとめた。

【ユニークアイズサマリー】計画的なOJT(実際の職務現場での教育訓練)とOFF-JT(職務現場を離れて行う教育訓練)研修を両方行っている企業は3割程度、いずれか片方のみの企業が合計で3割程度、いずれも未実施の企業が4割程度となっている。それと比例するように両方実施している企業は売上高増加率が最も高く、いずれも実施していない企業が最も低い。さらに能力開発を行っているい企業ほど、従業員の意欲も高いという結果になった。前の記事で紹介した「能力開発計画や方針が明確化された方が売上増加率が高い」というデータもある。
データを総合すると「人材開発を行った方が売上増や従業員の意欲向上につながる」が、中小企業ほど能力開発に割く人・時間・カネが限られる。それを裏付けるようにOJT・OFF-JTのどちらも行っていない企業は4割程度いる。外部環境をみると、新型コロナの影響や脱炭素化の流れなど、急激な変化の影響を受けている企業も多い。足元の対応と中長期的な視点で見た人材開発のバランスを取ったかじ取りが強いられている。

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※以下、本文中の文章は「中小企業白書 2022」から一部抜粋したもの。
※本記事の図はすべて「中小企業白書 2022」から抜粋しているが、元データの参照元は図表内に記載されている。

業種別に見た、計画的なOJT研修の実施有無

第2-2-25図は、業種別に、計画的なOJT研修の実施有無について見たものである。情報通信業や製造業では、実施している企業が5割程度であるのに対し、卸売業や小売業では4割未満となっており、業種によって実施状況に差異が見られる

(出典:中小企業白書 2022)

売上高増加率の水準別に見た、OJT研修の効果を高めるために実施している取組

第2-2-26図は、売上高増加率の水準別に、OJT 研修の効果を高めるための取組について見たものである。売上高増加率の水準に関わらず、「必要なスキルの明確化」や「目標や達成基準などを記入した育成計画の作成」、「業務マニュアルの作成」が上位となっている。また、「必要なスキルの明確化」や「担当業務の明確化」は、売上高増加率の水準による差異が大きく、企業の成長に向けてはOJT 研修と合わせてこれらの取組を実施することが重要と示唆される。

(出典:中小企業白書 2022)

業種別に見た、OFF-JT 研修の実施有無

第2-2-27図は、業種別に、OFF-JT研修の実施有無について見たものである。情報通信業や建設業では、半数近くの企業でOFF-JT研修が実施されているものの、卸売業では実施している企業は4割未満となっている。

(出典:中小企業白書 2022)

業種別に見た、実施しているOFF-JT 研修の内容

第2-2-28図は、業種別に、実施しているOFFJT研修の内容について見たものである。「技能の習得」や「マネジメント」に関するOFF-JT研修を実施している企業が多い。そのほかにも、製造業では「品質管理」、情報通信業では、「ビジネスマナー等のビジネスの基礎知識」や「プログラム、システムを自ら開発又は運用できるスキル」、卸売業や小売業では「営業スキル」などの割合も高く、従業員に求めるスキルに応じて、OFF-JT研修を実施している様子が見て取れる。

 また「業務を遂行する上で有益なITリテラシー」や「プログラム、システムを自ら開発又は運用できるスキル」については、情報通信業以外の業種では実施割合が低い。組織としてITリテラシーを高め、デジタル化を推進するためには、企業側が従業員に対して、こうした研修や学習の機会を積極的に提供することが期待される

(出典:中小企業白書 2022)

能力開発に対する積極性別に見た、従業員一人当たりのOFF-JT 研修に関する年間支出額(中央値)

第2-2-29図は、能力開発に対する積極性別に、従業員一人当たりのOFF-JT 研修に関する年間支出額を見たものである。経営者が能力開発に積極的な企業ほどOFF-JT研修に関する支出額が大きいことが分かる

(出典:中小企業白書 2022)

計画的なOJT研修及びOFF-JT 研修の実施状況

第2-2-30図は、計画的なOJT研修及びOFFJT研修の実施状況について見たものである。いずれも実施している企業は3割程度であり、いずれか片方のみを実施している企業が合わせて3割程度、いずれも実施していない企業が4割程度となっている。

(出典:中小企業白書 2022)

計画的なOJT研修及びOFF-JT 研修の実施状況別に見た、売上高増加率(中央値)

第2-2-31図は、計画的なOJT研修及びOFFJT研修の実施状況別に、売上高増加率について見たものである。これを見ると、いずれも実施している企業では売上高増加率が最も高く、いずれも実施していない企業では最も低いことが分かる企業の成長に当たっては、計画的なOJT研修やOFF-JT研修を実施し、従業員の能力開発を進めることが重要であることが示唆される。

(出典:中小企業白書 2022)

業種別に見た、自己啓発支援の実施有無

続いて、第2-2-32図は、業種別に、従業員に対する自己啓発支援の実施有無について見たものである。建設業や情報通信業では、6割以上の企業で実施しているのに対し、小売業や製造業、卸売業では、実施している企業は5割未満となっている

(出典:中小企業白書 2022)

業種別に見た、実施している自己啓発支援の内容

第2-2-33図は、業種別に、実施している自己啓発支援の内容について見たものである。業種に関わらず、「資格取得の費用補助」や「研修やセミナーの費用補助」が上位となっている。感染症の流行を契機に注目された「eラーニングや通信教育等の費用補助」については、情報通信業以外の業種では、実施している企業は2割程度と低いことが分かる。

(出典:中小企業白書 2022)

求める人材像や従業員の目指す姿の明確化の状況別に見た、従業員一人当たりの自己啓発支援に対する年間支出額(中央値)

第2-2-34図は、求める人材像や従業員の目指す姿の明確化の状況別に、従業員一人当たりの自己啓発支援に対する年間支出額について見たものである。これを見ると、人材像や目指す姿を公表したり、明確化したりしている企業では、自己啓発支援に対する支出額が大きいことが分かる。人材像や目指す姿を明確化することで、従業員一人一人の自己啓発に対する意欲が高まる可能性が示唆される

(出典:中小企業白書 2022)

能力開発の取組状況別に見た、従業員の仕事に対する意欲

最後に、第2-2-35図は、能力開発の取組状況別に、従業員の仕事に対する意欲について見たものである。これを見ると、いずれの取組においても実施している企業の方が従業員の仕事に対する意欲が高いことが分かる。従業員の働きがいやモチベーション向上という観点からも、企業が積極的に能力開発の機会を提供することが重要といえる。

(出典:中小企業白書 2022)
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