中小企業における借入金の過剰感は?(2022年版中小企業白書の統計データを抜粋してみた㊱)

統計・調査記事
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毎年、経済産業省中小企業庁から発行される中小企業白書。2022年版の白書は表紙から参考文献などを含めると590ページに及ぶ。そこで、統計データを、中小企業に関係する者が参考にしやすいように抜粋して、回数を分けて紹介する。第36回目は借入金の過剰感についてまとめた。

ユニークアイズサマリー:今回は中小企業の借入金の過剰感についてである。新型コロナウイルス感染症流行前に比べ、借入金の過剰感をある程度または大いに感じている企業の割合が増加(21.3%→29.8%)している。「大いに感じている」と回答した企業では、借入金月商倍率が5倍を超える企業が半数以上となっている一方で、借入金の過剰感を「ほとんど感じていない」と回答した企業では、多くの企業で借入金月商倍率が2倍以下だった。借入金の過剰感を感じている企業ほど、借入金の返済見通しに懸念を感じており、新たな資金調達ができなくなることへの懸念を感じている企業の割合が高くなっている。

いわゆるコロナ融資の影響で、ここ数年の倒産件数は歴史的な低水準となった。ただ、コロナ融資の返済が本格的に始まった今夏以降、コロナ融資後倒産が増えているというデータもある。まずはコロナ禍を乗り切るという大きな壁はあるが、経済情勢が目まぐるしく変化する昨今の状況では、継続的な企業経営のためには守りだけではなく、成長のための投資も必要と言えよう。

※以下、本文中の文章は「中小企業白書 2022」から一部抜粋したもの。
※本記事の図はすべて「中小企業白書 2022」から抜粋しているが、元データの参照元は図表内に記載されている。

借入金の過剰感

第2-2-152図は感染症流行前(2020年1月)及び現在の借入金の過剰感を確認したものである。これを見ると、感染症流行前に比べて、借入金の過剰感を感じていると回答した企業の割合が増加していることが分かる。

(出典:中小企業白書 2022)

現在の借入金の過剰感別に見た、借入金月商倍率(2021 年)の分布

借入金の過剰感別に、借入金の水準を確認したものが第2-2-153図である。これを見ると、「大いに感じている」と回答した企業では、借入金月商倍率が5倍を超える企業が半数以上となっている一方で、借入金の過剰感を「ほとんど感じていない」と回答した企業では、多くの企業で借入金月商倍率が2倍以下となっている。

(出典:中小企業白書 2022)

現在の借入金の過剰感別に見た、借入金の返済見通しや懸念感

続いて、第2-2-154図は借入金の過剰感別に、借入金の返済見通しを確認したものである。これを見ると、借入金の過剰感を感じている企業ほど、借入金の返済見通しに懸念を感じていることが分かる。また、第2-2-155図は、借入金の過剰感別に、新たな資金調達ができなくなることの懸念感を確認したものである。これを見ると、借入金の過剰感を感じている企業ほど、新たな資金調達ができなくなることへの懸念を感じている企業の割合が高くなっていることが分かる。借入金の過剰感を感じている企業の中には、借入金の返済見通しに懸念があり、借入れを含めた新たな資金調達を行うことが難しい状況に陥っている企業が一定数存在する様子がうかがえる。

(出典:中小企業白書 2022)
(出典:中小企業白書 2022)
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