中小企業の利益の使い道では内部留保減、従業員還元増という結果に(2022年版中小企業白書の統計データを抜粋してみた㉗)

統計・調査記事
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毎年、経済産業省中小企業庁から発行される中小企業白書。2022年版の白書は表紙から参考文献などを含めると590ページに及ぶ。そこで、統計データを、中小企業に関係する者が参考にしやすいように抜粋して、回数を分けて紹介する。第27回目は中小企業経営者に関する特徴その2についてまとめた。

【ユニークアイズサマリー】今回は中小企業経営者の特徴(その2)をまとめたものである。まず、経営者の年齢別に利益の主な使い道を5年前と現在で比べたデータでは、5年前は年齢にかかわらず「内部保留」が3割超だった。一方、現在は若い経営者を中心に「従業員に還元」の割合が増えている結果だった。利益の主な使い道別に売上増加率をみると、「研究開発」や「設備投資」、「従業員に還元」としている企業が、売上高増加率が相対的に高い。また経営者が現場業務などではなく、経営・マネジメント業務に充てる時間の比率別の売上高増加率では、経営者の経営・マネジメント業務の比率が6割以上である企業では、相対的に売上高増加率が高い。

内部保留は企業の信頼性や倒産リスクを減らすという点でメリットがある。ただ今回のデータでは内部保留より、研究開発や従業員に還元するといった利益の使い道の方が、売上増加率が高い。いかに利益を未来の利益への好循環を生み出せるかがポイントと言えるだろう。

※以下、本文中の文章は「中小企業白書 2022」から一部抜粋したもの。
※本記事の図はすべて「中小企業白書 2022」から抜粋しているが、元データの参照元は図表内に記載されている。

経営者の年齢別に見た、利益の主な使い道(5年前と現在)

第2-2-109図は、経営者の年齢別に、5年前と現在の利益の主な使い道について見たものである。5年前について見ると、経営者の年齢に関わらず、「内部留保」が3割超となっている。一方で、現在は、年齢が若い経営者を始めとして「内部留保」の割合が低下しており、また、いずれの年齢においても、「従業員に還元」の割合が3割程度となっている。5年前に比べ、利益を従業員に還元する意識が高い経営者が増加している様子が見て取れる。

(出典:中小企業白書 2022)

利益の主な使い道別に見た、売上高増加率(中央値)

第2-2-110図は、利益の主な使い道別に、売上高増加率について見たものである。利益の主な使い道について、「研究開発」や「設備投資」、「従業員に還元」としている企業では、売上高増加率が相対的に高く、こうした投資行動が企業の成長につながっている可能性が示唆される。一方で、「内部留保」としている企業では、売上高増加率が相対的に低いことが分かる。

(出典:中小企業白書 2022)

従業員規模別に見た、経営者の経営・マネジメント業務に充てる時間の比率

第2-2-111図は、従業員規模別に、経営者の経営・マネジメント業務に充てる時間の比率について見たものである。規模の大きい企業ほど経営者が経営・マネジメント業務に充てる時間が長い傾向にあることが分かる。従業員規模が20人以下の企業では、経営・マネジメント業務の比率が3割未満となっている経営者が2割超存在しており、経営・マネジメント業務に充てる時間を十分に確保できていない様子が見て取れる。

(出典:中小企業白書 2022)

経営者の経営・マネジメント業務に充てる時間の比率別、売上高増加率(中央値)

第2-2-112図は、経営者の経営・マネジメント業務に充てる時間の比率別に、売上高増加率について見たものである。経営者の経営・マネジメント業務の比率が6割以上である企業では、相対的に売上高増加率が高いことが分かる。企業の成長に当たっては、経営者が、現場業務だけでなく、企業の方針策定や組織体制の整備といった経営・マネジメント業務にも一定程度の時間を確保することが重要といえよう。

(出典:中小企業白書 2022)
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