KPIと労働生産性の関係性は?(2022年版中小企業白書の統計データを抜粋してみた㉔)

統計・調査記事
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毎年、経済産業省中小企業庁から発行される中小企業白書。2022年版の白書は表紙から参考文献などを含めると590ページに及ぶ。そこで、統計データを、中小企業に関係する者が参考にしやすいように抜粋して、回数を分けて紹介する。第24回目は経営戦略の運用(KPIによる経営管理編)についてまとめた。
※ここでいうKPI(重要業績指標)は、「いわゆる生産目標や売上目標のことではなく、売上げ、コスト、無駄、品質、在庫、エネルギー消費、納期の厳守、顧客満足度に関する数値などで、最終目的を達成するため企業活動が順調に進んでいるかどうかを示す企業全体での指標」としている。

【ユニークアイズサマリー】今回はKPIによる経営管理編である。まずKPI(重要業績指標)の社内における認識状況では、従業員の多くまでKPIを認識している企業は12.5%にとどまっている。社内のKPI認識状況別の労働生産性では、従業員の多くがKPIを認識している企業のほうが労働生産性の水準が高い傾向にある。KPIの確認頻度は月に1回以上確認している企業が約7割だった。確認頻度別での労働生産性の水準では、年に1回程度又は確認していない企業と比べて、半期に1回以上確認している企業の方が労働生産性の水準が高い傾向にある。

今回の統計の結論から言うと、「従業員の多くがKPIを認識し、半期に1回以上確認している企業の方が労働生産性の水準が高い」という結果だった。簡単に言えば、ゴール(目標)に向けて具体的な数値などの道筋をしっかり描けている企業ほど、労働生産性が高いということになる。もしゴール(目標)にたどり着けなくても、問題点を洗い出すことに役立つため、従業員の多くがKPIを意識していくことが重要と言えるだろう。

※以下、本文中の文章は「中小企業白書 2022」から一部抜粋したもの。
※本記事の図はすべて「中小企業白書 2022」から抜粋しているが、元データの参照元は図表内に記載されている。

KPIの利用状況

経営戦略を策定し、具体的な施策に落とし込んだ経営計画に基づいて事業を行っていく上で、計画が順調に進んでいるかを管理するために用いられるものとしてKPIが挙げられる。ここでは、KPIによる経営管理の状況について確認する。第2-2-96図は、KPIの利用状況を見たものである。KPIを利用している企業は36.7%と一定数存在するものの、利用していない企業の方が多くなっている。

(出典:中小企業白書 2022)

KPIの認識状況

ここからは、KPI を利用している企業について見ていく。第2-2-97図はKPI の社内における認識状況を示したものである。経営者側から見た調査ではあるものの、従業員の多くまでKPIを認識している企業は12.5%にとどまっていることが分かる。

(出典:中小企業白書 2022)

KPIの認識状況別に見た、労働生産性の水準(2019-2020 年平均の中央値)

また、KPIの社内における認識状況別に、労働生産性の水準を見ると、従業員の多くがKPIを認識している企業において、労働生産性の水準が最も高いことが分かる(第2-2-98図)。今回の調査だけは一概にはいえないものの、自社の経営目標を達成するため企業活動が順調に進んでいるかどうかを示す指標であるKPIを従業員の多くが認識することで、従業員が企業業績を高めるために取るべき行動を実施しやすくなり、企業業績にプラスの効果が生まれている可能性が考えられる。

(出典:中小企業白書 2022)

KPI の確認頻度

最後に、経営層によるKPI の確認頻度を見ると、月に1回以上確認している企業が約7割となっている(第2-2-99図)。また、確認頻度別に、労働生産性の水準を見ると40、年に1回程度又は確認していない企業と比べて、半期に1回以上確認している企業の方が労働生産性の水準が高い傾向にあることが分かる(第2-2-100図)。今回の調査だけでは一概にはいえないものの、KPIをより高い頻度で定期的に確認することで、自社の経営目標達成に向けてPDCAサイクルを有効に回すことができ、企業業績にプラスの効果が生まれている可能性が考えられる。

(出典:中小企業白書 2022)
(出典:中小企業白書 2022)
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