仕入価格の上昇が過去最高を記録、景気は小幅改善 -TDB景気動向調査(3月)-

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  帝国データバンクが5日に発表した3月の景気動向調査(全国)によると、前年比0.5ポイント増の40.4となり、3ヵ月ぶりに改善した。まん延防止等重点措置が解除されるなどプラス要因がある一方、原材料価格の高騰などで仕入単価DIが過去最高を記録した。好悪両面の要因が顕在化したなかで下落傾向が停止し、わずかに上向いた。今後の見通しは、下振れリスクを抱えながらも、人出の増加などで緩やかに上向くとしている。

 3 月の国内景気は、新規感染者数の漸減などのプラス要因と、ウクライナ情勢の長期化などにともなう原材料価格の高騰といったマイナス要因が入り混じるなかで、小幅な改善となった。

 プラス要因では、まん延防止等重点措置が対象地域すべてで解除され人出が徐々に活発となったほか、旺盛な自宅内消費の継続や値上げ前の駆け込み需要などが景況感を押し上げた。

 マイナス要因では、原油価格の高値推移や福島県沖地震は景況感を下押しした。特に原油価格は一時 1 バレル=123 ドルに上昇し石油製品の値上げが相次いだうえ、急激な円安の進行で輸入物価が上昇するなど、仕入単価DIは過去最高の水準を記録した。

業界別では7業界が改善、3業界が悪化

 業界別では『卸売』『サービス』など7業界が改善、『製造』『運輸・倉庫』など3業界が悪化した。ウクライナ情勢、新型コロナウイルスの影響で原材料価格の高騰がより深刻となるなか、仕入単価DIは10業界中8業界、販売単価DIも5業界で過去最高の水準まで上昇した。

 『卸売』(38.6)は前月比0.9ポイント増。3カ月ぶりに改善。「幅広い商品の値上げ前の駆け込み需要がある」(紙製品卸売)、「巣ごもり需要と、商品値上げ前の前倒し受注が増大」(建築材料卸売)などの声が聞かれ、4 月の価格改定を前に一部企業では駆け込み需要による影響がみられた。一方、「急激な円安による影響があるなか、販売価格に転嫁できない」(果実卸売)など、急激な円安による影響や、原油や木材、鉄など原材料価格の高騰が続くなか、『卸売』の仕入単価 DI は 71.4 と調査開始後初めて 70 を上回った。業種別でも、石油卸売が含まれる「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」(81.3)など、6 業種で過去最高の水準となった。

 『製造』(40.9)は同0.3ポイント減で3カ月連続で悪化となった。ウクライナ情勢の影響もあり、原材料の価格が高騰するなか、『製造』の仕入単価DIは75.6(同2.8 ポイント増)まで上昇し、過去最高の水準となった。特に、「鉄鋼・非鉄・鉱業」(80.4)や、「建材・家具、窯業・土石製品製造」(76.6)、「電気機械製造」(74.1)など、12業種中6業種で過去最高の水準となり、それらの業種の景況感を下押しした。また、「半導体不足の深刻化と東北における地震の影響があり、悪影響を及ぼしてきた」(自動車部品・付属品製造)など、半導体不足や福島県沖での地震の影響もみられる。他方、「Go To キャンペーンなども再開されるとみられ、それに向けて年度末の印刷需要が動いている」(印刷)といった声も聞かれた。

地域別では6地域が改善

地域別にみると、10地域中6地域が改善、1地域が悪化、3地域が横ばいだった。まん延防止等重点措置が21日にすべての地域で解除されたことはプラス要因。一方、福島県沖地震は観光シーズンを前に地域経済の回復に水を差す格好となった。規模別では「大企業」「中小企業」「小規模企業」すべてが3カ月ぶりにそろって改善した。

今後の見通しは緩やかな上向き

今後1年程度の国内景気は、新型コロナウイルスの感染動向のほか、ウクライナ情勢の行方や原油を含む原材料価格の高騰などに注視する必要があろう。特に、「ガソリン・経費・材料の値上げ幅が大きく価格転嫁には半年かかる」(給排水・衛生工事)といった、仕入価格の上昇に対する販売価格への転嫁の状況次第で、企業の収益力に大きな影響を及ぼす可能性がある。他方、旺盛な自宅内消費の継続や 5G 関連の環境整備、半導体需要の増加などはプラス材料となろう。さらに、対面型サービス需要の拡大や挽回生産も期待される。今後は、下振れリスクを抱えながらも、人出の増加などで緩やかに上向くと見込まれる。

TDB景気動向調査 −2022年3月調査結果−
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