コロナ禍でも事業再構築を行っていない中小企業は意外と多い?(2022年版中小企業白書の統計データを抜粋してみた⑩)

統計・調査記事
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毎年、経済産業省中小企業庁から発行される中小企業白書。2022年版の白書は表紙から参考文献などを含めると590ページに及ぶ。そこで、製造業に関係する統計データを、製造業に関係する者が参考にしやすいように抜粋して、数回に分けて紹介する。第10回目は新型コロナ感染症下の事業再構築についてまとめた。

【ユニークアイズサマリー】 新型コロナ感染症下で事業再構築を行う予定がないと回答した中小企業は70%を超えた。従業員規模別にみてもその割合は大きな差はないが、業種別では、コロナ禍で影響を受けている宿泊業・飲食サービス業が事業再構築を行っている割合が高くなっている。事業再構築の事業規模的には、企業全体の売上高に対して20%未満と回答した企業が7割を超えており、小規模な事業から始めている企業が多いことが分かる。

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※以下、本文中の文章は「中小企業白書 2022」から一部抜粋したもの。
※本記事の図はすべて「中小企業白書 2022」から抜粋しているが、元データの参照元は図表内に記載されている。

事業再構築の実施状況

新型コロナウイルス感染症下において、中小企業を取り巻く事業環境は大きく変化した。中小企業は事業環境の変化に応じ、自社が競争優位に立てる事業領域へ進出することが必要であり、事業再構築は、足元の事業継続だけでなく、事業の成長にも寄与する点でも重要である。

第2-1-44図は、感染症下における事業再構築の実施状況を確認したものである。これを見ると、「既に行っている」と回答した企業の割合は12.7%、「1年以内に行う予定」と回答した企業の割合は9.8%であり、事業再構築を実施済み又は実施予定の企業は合わせて22.5%となっている。

(出典:中小企業白書 2022)

事業再構築の実施状況(従業員規模別・業種別)

第2-1-45図は、事業再構築の実施状況を従業員規模別に示したものである。これを見ると、101人以上の従業員規模の企業において、既に事業再構築を行っている企業の割合が高くなっているものの、全体として従業員規模別で実施状況に大きな差はないことが分かる。また、第2-1-46図は、事業再構築の実施状況を業種別に示したものである。これを見ると、宿泊業・飲食サービス業において特に事業再構築を行っている割合が高くなっており、実施予定の企業を含めると、小売業や生活関連サービス業・娯楽業の割合が高くなっていることが分かる。これらの業種は感染症流行の影響をより受けた業種でもあり、売上減少が続く中で事業再構築を実施している様子がうかがえる。

(出典:中小企業白書 2022)
(出典:中小企業白書 2022)

事業再構築の実施状況別、売上高の変化(中央値)

第2-1-47図は、事業再構築の実施状況別に、2019年から20年にかけての売上高の変化を示したものである。「行う予定はない」と回答した企業と比較して、「既に行っている」、「1年以内に行う予定」と回答した企業の方が、売上高の減少率が高い傾向にあることが分かる。先ほどの第2-1-46図において業種別で確認したように、特に感染症の影響が大きかった企業において事業再構築を実施・検討している様子がうかがえる。

(出典:中小企業白書 2022)

事業再構築の内容

次に、実際に行われた又は行われる予定の事業再構築はどういったものであるのかを確認する(第2-1-49図)。これを見ると、「既存の市場・販路× 新規の製品・商品・サービス」の回答割合が最も高くなっていることが分かる。

(出典:中小企業白書 2022)

事業再構築の規模

続いて、第2-1-51図は、事業再構築の事業規模を示したものである。これを見ると、現在の企業全体の売上高に対して20%未満と回答した企業の割合が7割を超えていることが分かる。ここでの事業再構築は、主力の事業を入れ替えるような大がかりなものというよりは、新たな柱の一つとなる事業の構築を目指す規模のものが多い様子がうかがえる。

(出典:中小企業白書 2022)

事業再構築による売上面での効果

ここでは事業再構築を実施することによる効果について確認していく。第2-1-52図は、事業再構築による売上面での効果を確認したものである。「効果が出る見込みは薄い」及び「既に撤退している」と回答した企業を除いた割合は96.0%となっており、事業再構築の実施は売上面で一定の効果が期待できることが分かる。

(出典:中小企業白書 2022)

事業再構築による売上面以外の効果

最後に、事業再構築を実施したことによる売上面以外の効果を確認する。第2-1-54図を見ると、「既存事業とのシナジー効果」の回答割合が38.5%と最も高くなっていることが分かる。事業再構築を実施することで、実施した事業以外への波及効果も期待できるといえよう。

(出典:中小企業白書 2022)
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