中小企業は財務や組織など内部環境をどれだけ分析しているのか?(2022年版中小企業白書の統計データを抜粋してみた㉑)

統計・調査記事
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毎年、経済産業省中小企業庁から発行される中小企業白書。2022年版の白書は表紙から参考文献などを含めると590ページに及ぶ。そこで、統計データを、製造業を中心に中小企業に関係する者が参考にしやすいように抜粋して、回数を分けて紹介する。第21回目は事業環境の分析を踏まえた経営戦略の策定(内部環境に関する情報収集・分析状況)についてまとめた。

【ユニークアイズサマリー】今回は「財務」や「組織」、「バリューチェーン」、「マネジメント」、「製品」の5つの観点で内部環境に関する情報収集・分析状況についての分析したものである。財務や組織の分析を行い、経営戦略に反映している企業の割合がそれぞれ3割を超え、他の項目と比較して高い結果となった。一方で「パリューチェーン」について情報収集などを行っていな企業が4社に1社(25.3%)あった。

ここ2回で外部・内部環境について、情報収集・分析状況を紹介していたが、各項目を大まかにみると情報収集を行っている企業は半数以上(分析を行っている企業を含む)、分析を行っている企業は2割前後、分析をして経営戦略に反映させているのは2割~3割程度だった。逆に外部・内部環境を分析せず、経営戦略に反映させていない企業が一定数いるという結果だった。ただ、経営戦略に反映させている企業ほど、労働生産性の水準が高いという結果もあるため、情報収集までで留まっていたところから、分析・反映へもう一歩踏み出すことが必要だろう。

※以下、本文中の文章は「中小企業白書 2022」から一部抜粋したもの。
※本記事の図はすべて「中小企業白書 2022」から抜粋しているが、元データの参照元は図表内に記載されている。

内部環境に関する情報収集・分析状況

自社の強み・弱みを把握する上では、様々な面から内部環境を分析する必要がある。ここでは、「財務分析」に加えて、自社の組織体制や、社内の人材のスキルなどを把握する「組織分析」、自社の事業の商流を理解し、強み・弱みを把握する「バリューチェーン分析」、経営管理の状況を把握する「マネジメント分析」、自社の扱う製品・商品・サービスごとの特徴を把握する「製品分析」の五つの観点から、内部環境に係る情報収集・分析の実施状況を確認していく。

2-2-81図は、上記の内部環境に係る5つの項目について、情報収集・分析状況を確認したものである。これを見ると、財務や組織の分析を行い、経営戦略に反映している企業の割合がそれぞれ39.3%、33.6%となっており、他の項目と比較して高くなっていることが分かる。他方、バリューチェーンについては情報収集・分析を行っていないと回答した企業の割合が25.3%であり、自社がバリューチェーン上で担っている機能を十分に把握できてない企業が一定数存在することが分かる。

(出典:中小企業白書 2022)

外部環境及び内部環境の項目ごとの労働生産性の水準

ここまで見てきた外部環境及び内部環境の項目ごとに、「全て経営戦略に反映させている」企業と、「全て少なくとも分析を行っている」企業、「その他」の企業に分けて労働生産性の水準を確認したものが、第2-2-82図、第2-2-83図、第2-2-84図及び第2-2-85図である。各項目において、「全て経営戦略に反映させている」企業の労働生産性の水準が最も高くなっていることが分かる。今回の調査だけでは一概にはいえないものの、外部環境や内部環境の分析を行い、経営戦略に反映させることで、自社の強みをいかせる市場への進出などを通じて、企業業績にプラスの影響を及ぼしている可能性が考えられる。

(出典:中小企業白書 2022)

(出典:中小企業白書 2022)

(出典:中小企業白書 2022)

(出典:中小企業白書 2022)
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