中小企業の経営戦略は社員に浸透しているのか?(2022年版中小企業白書の統計データを抜粋してみた㉓)

統計・調査記事
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毎年、経済産業省中小企業庁から発行される中小企業白書。2022年版の白書は表紙から参考文献などを含めると590ページに及ぶ。そこで、統計データを、中小企業に関係する者が参考にしやすいように抜粋して、回数を分けて紹介する。第23回目は経営戦略の運用(経営戦略の見直しや戦略の浸透度編)についてまとめた。

【ユニークアイズサマリー】今回は経営戦略の運用についてである。まず経営戦略の見直しを「少なくとも年に1回は行っている企業」は61.9%だった。一方で、「策定・見直しをしていない」企業も24.4%いる。経営戦略の見直し頻度別に、労働生産性の水準をみると、見直しを行っている企業の方が労働生産性の水準がやや高い傾向にある。経営戦略の浸透度は「浸透していない」が20.6%、「経営層から主任・係長クラスまで浸透している」が59.5%、「管理職以外の従業員にまで浸透している」が20%だった。また従業員への経営戦略の浸透度が高いほど、労働生産性の水準が高い傾向にあった。

経営戦略を見直しを行い、さらに社員への浸透度が高いほど労働生産性が高い傾向にあるという結果からも、外部・内部の状況に合わせて定期的な経営戦略の見直しを行った方がよいと言えるだろう。ただ、全体的に浸透度は高くなく、全社的に浸透させる工夫・働きかけが重要である。

※以下、本文中の文章は「中小企業白書 2022」から一部抜粋したもの。
※本記事の図はすべて「中小企業白書 2022」から抜粋しているが、元データの参照元は図表内に記載されている。

経営戦略の見直し頻度

はじめに、経営戦略の見直し状況を確認していく。第2-2-90図は、経営戦略の見直し頻度を確認したものである。これを見ると、6割以上の企業は、年に1回以上の頻度で経営戦略の見直しを行っている一方で、経営戦略の定期的な見直しを行っていない企業も一定程度存在することが分かる。

(出典:中小企業白書 2022)

経営戦略の見直し頻度別に見た、労働生産性の水準(2019-2020 年平均の中央値)

続いて、第2-2-91図は経営戦略の見直し頻度別に、労働生産性の水準を示したものである36。経営戦略の見直しを行っていない企業と比べ、見直しを行っている企業の方が労働生産性の水準がやや高い傾向にあることが分かる。今回の調査では一概にはいえないものの、自社を取り巻く事業環境の変化に合わせ、定期的な経営戦略の見直しを実施することの重要性が示唆される。

(出典:中小企業白書 2022)

経営営計戦画略への経落営計とし画込へみの状落況とし込み状況

第2-2-92図は経営戦略を、損益計画、財務計画、営業計画、人員計画のそれぞれにどの程度落とし込んでいるかを確認したものである。損益計画や営業計画に比べ、設備投資を含んだ財務計画や従業員の採用・配置を含む人員計画に落とし込んでいる企業の割合はやや低いことが分かる。

(出典:中小企業白書 2022)

経営戦略の浸透度

第2-2-93図は経営戦略の浸透度を確認したものである。これを見ると、管理職以外の従業員にまで浸透している企業が20.0%となっている一方で、浸透していない企業も20.6%と一定数存在することが分かる。

(出典:中小企業白書 2022)

経営計画への落とし込み状況別に⾒た、経営戦略の浸透度

続いて、第2-2-94図は、経営戦略の浸透度を、経営計画への落とし込み状況別に見たものである。いずれの項目においても、経営計画へ十分に記載されているほど、経営戦略が社内に広く浸透していることが分かる。策定された経営戦略を従業員に浸透させていく上では、具体的な数値や施策を計画に落とし込み、内容を充実させることが重要といえよう。

(出典:中小企業白書 2022)

経営戦略の浸透度別に見た、労働生産性の水準(2019-2020 年平均の中央値)

続いて、第2-2-95図は、経営戦略の浸透度別に、労働生産性の水準を示したものである37。これを見ると、経営戦略の浸透度が高い企業において、労働生産性の水準が高い傾向にあることが分かる。経営者側から見た調査であり、今回の調査だけでは一概にはいえないものの、経営戦略が全社的に浸透することで、従業員が何をするべきかが明確化され、企業業績にもプラスの効果が生まれている可能性が考えられる。

(出典:中小企業白書 2022)
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