【保存版⑧】2022年版中小企業白書の統計データを抜粋してみた(経営資源の有効活用編その2)

統計・調査記事
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毎年、経済産業省中小企業庁から発行される中小企業白書。2022年版の白書は表紙から参考文献などを含めると590ページに及ぶ。そこで、製造業に関係する統計データを、製造業に関係する者が参考にしやすいように抜粋して、数回に分けて紹介する。第8回目は経営資源の有効活用(その2)についてまとめた。

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【保存版①】2022年版中小企業白書の統計データを抜粋してみた(国内経済の現状編)
【保存版②】2022年版中小企業白書の統計データを抜粋してみた(中小企業事業者の現状編)
【保存版③】2022年版中小企業白書の統計データを抜粋してみた(雇用の動向編)
【保存版④】2022年版中小企業白書の統計データを抜粋してみた(原油・原材料価格の高騰編)
【保存版⑤】2022年版中小企業白書の統計データを抜粋してみた(事業継続計画の取り組み編)
【保存版⑥】2022年版中小企業白書の統計データを抜粋してみた(労働生産性と分配編)
【保存版⑦】2022年版中小企業白書の統計データを抜粋してみた(経営資源の有効活用編その1)

「中小企業白書 2022」の全文はこちら

※以下、本文中の文章は「中小企業白書 2022」から一部抜粋したもの。
※本記事の図はすべて「中小企業白書 2022」から抜粋しているが、元データの参照元は図表内に記載されている。

M&A件数の推移

ここからは、中小企業における事業承継の選択肢の一つとして、近年関心が高まっているM&A の動向について確認する。第1-1-90図は、M&A件数の推移について見たものである。(株)レコフデータの調べによると、M&A件数は近年増加傾向で推移しており、2021年は過去最多の4,280件となった。これはあくまでも公表されている件数であるが、M&Aについては未公表のものも一定数存在することを考慮すると、国内企業におけるM&Aは更に活発化していることが推察される。

(出典:中小企業白書 2022)

中小企業のM&A実施状況

続いて、第1-1-91図は、中小企業におけるM&Aの実施状況について見たものである。中小企業のM&A の実施状況は、公表されていないことも多く、データの制約も大きい。そこで、中小企業のM&A仲介を手掛ける東証一部上場の3社((株)日本M& A センター、(株)ストライク、M&Aキャピタルパートナーズ(株))の成約件数及び、全国に設置されている事業承継・引継ぎ支援センターの成約件数について確認する。これを見ると、中小企業M&A仲介上場3社、事業承継・引継ぎ支援センターのいずれも成約件数が増加傾向にあることが分かる。

(出典:中小企業白書 2022)

買い手としてのM&A実施意向のある企業の相手先企業の探し方

ここからは、買い手としてのM& A 実施の状況について確認する。第1-1-92図は、買い手としてのM&A実施意向のある企業の相手先企業の探し方について見たものである。金融機関に探索を依頼する企業が7割超と最も高く、続いて専門仲介機関に探索を依頼する企業が4割超となっている。なお、M&A件数の増加に伴い、M&A支援機関の数も増加する中、十分な知見・ノウハウなどを有しないM&A支援機関の参入も懸念されつつあることから、中小企業庁では、21年8月に「M&A支援機関登録制度」を創設し、中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤の構築に取り組んでいる。

(出典:中小企業白書 2022)

買い手としてM&Aを実施する際の障壁

第1-1-93図は、買い手としてのM & Aを実施する際の障壁について見たものである。「期待する効果が得られるかよく分からない」、「判断材料としての情報が不足している」、「相手先従業員等の理解が得られるか不安がある」が上位となっている。このような障壁を解決するためには、まず、M&AプロセスにおいてM&A支援機関による調査などを有効活用し、情報収集や判断の助言などのサポートを受けることが重要となる。他方で、M&Aプロセスだけで全てを解決することはできないため、M&A後の円滑な統合作業(PMI)が必要となる。また、売り手においても、従業員や取引先との信頼関係の構築を重視する声が多く、これらについてもM&A実施後の統合作業(PMI)において意識的に取り組むことが重要である。

(出典:中小企業白書 2022)

M&A実施後の満足度別に見た、M&A実施の具体的効果

第1-1-94図は、M&A実施後の満足度別に、M&A実施の具体的効果について見たものである。これを見ると、「期待どおり、期待以上の満足度」の企業では、「商圏の拡大による売上・利益の増加」や「商品・サービスの拡充による売上・利益の増加」といった売上・利益面の向上を通じ、付加価値向上を実感している割合が「期待を下回る満足度」の企業よりも高いことが分かる。

(出典:中小企業白書 2022)

M&Aの相手先の経営者年齢

続いて、売り手としてのM&Aについて確認する。第1-1-95図は、買い手企業に、M&Aの相手先企業の経営者年齢について確認したものである。これを見ると、60 歳代が約5割、70歳以上が約2割と、60 歳代以上の構成比が7割程度と高いことが分かる。

(出典:中小企業白書 2022)

M&Aの相手先経営者の年齢別に見た、相手先のM&Aの目的

第1-1-96図は、買い手企業に対し、相手先企業の経営者年齢別にM&Aの相手先企業のM&Aの目的について確認したものである。これを見ると、相手先経営者の年齢が「60 歳代」や「70歳以上」の場合、「事業の承継」を目的とする割合が最も高いことが分かる。一方で、経営者年齢が「40 歳代以下」の場合は、「事業の成長・発展」を目的としてM&Aを行う割合が他の年代よりも高くなっており、企業の成長戦略としてM&Aが活用されていることがうかがえる。

(出典:中小企業白書 2022)

売り手としてのM&A実施意向のある企業の相手先企業の探し方

第1-1-97図は、売り手としてのM&A実施意向のある企業の相手先企業の探し方について見たものである。これを見ると、金融機関や専門仲介機関に依頼する企業の割合が相対的に高いことが分かる。また、第1-1-92図で見た買い手としての意向がある企業と比較すると、「事業引継ぎ支援センター」や「商工会議所・商工会」に紹介を依頼する割合が相対的に高く、身近な公的機関に相談するケースも多い様子が見て取れる。

(出典:中小企業白書 2022)

売り手としてM&Aを実施する際の障壁

第1-1-98図は、売り手としてのM & Aを実施する際の障壁について見たものである。「経営者としての責任感や後ろめたさ」が最も高く、M&Aの意志決定の際にこうした心理的側面が影響していることが分かる。また、「相手先(買い手)が見付からない」や「仲介等の手数料が高い」といった実務的な障壁の割合も高く、売り手としてのM&Aを支援する仕組みの更なる充実が期待される。

(出典:中小企業白書 2022)
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