中小企業が脱炭素化に向けた取組を実施していない理由は?(2022年版中小企業白書の統計データを抜粋してみた㉞)

統計・調査記事
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毎年、経済産業省中小企業庁から発行される中小企業白書。2022年版の白書は表紙から参考文献などを含めると590ページに及ぶ。そこで、統計データを、中小企業に関係する者が参考にしやすいように抜粋して、回数を分けて紹介する。第34回目は脱炭素化に向けた課題と脱炭素化の取組による効果についてまとめた。

ユニークアイズサマリー:今回は脱炭素化に向けた課題と脱炭素化の取組による効果についてである。脱炭素に向けた取組を実施していない理由(複数回答)は、「自社の排出量は少ないと思うため(61.9%)」の回答割合が最も高くなっており、次いで「取引先からの要請がないため(26.4%)」の回答割合が高かった。さらに、どのような効果があれば脱炭素化の取組を前向きに検討するかを聞いた問い(複数回答)では「顧客からの評価向上(43.4%)」の回答割合が最も高くなっており、次いで「コストカット(30.2%)」だった。すでに脱炭素の取組をしている企業に対して、脱炭素を進めることによる効果を聞いた問い(複数回答)では、「光熱費・燃料費の低減(70.3%)」の割合が最も高く、次いで「市場での競争力の強化(37.8%)」だった。

前回の脱炭素に向けた取組をしている企業は17.4%で、今回脱炭素に向けた取組をしていない理由で最も多かったのが「自社の排出量が少ないと思うため」で、次いで「取引先からの要請がない」という結果からも、中小企業の多くは「まだ求めらていない」ということに加え、「何をすればよいのか分からない」といった状況と推測する。今後はサプライチェーン全体の脱炭素化(スコープ3)が求められる可能性が高い。中小企業もそのための投資・リソースを割くことになると思うが、求める側はそれに伴うプラスの面(効果)やメリット・合理的な必然性を示すことが重要と言えるだろう。

※以下、本文中の文章は「中小企業白書 2022」から一部抜粋したもの。
※本記事の図はすべて「中小企業白書 2022」から抜粋しているが、元データの参照元は図表内に記載されている。

脱炭素化に取り組まない理由と温室効果ガス排出量の把握状況

第2-2-143図は、脱炭素化に向けて取組を実施していない理由を確認したものである。これを見ると、「自社の排出量は少ないと思うため」の回答割合が最も高くなっており、次いで「取引先からの要請がないため」の回答割合が高くなっていることが分かる。脱炭素化の取組の必要性を感じていないことが、中小企業において取組が進んでいない理由と考えられる。一方で、脱炭素化の取組状況別に、温室効果ガス排出量の把握状況を確認すると、脱炭素化の取組を今後実施する予定のない企業の93.0%は自社の排出量自体を把握した上で少ないと判断しているわけではないことが分かる(第2-2-144図)。

(出典:中小企業白書 2022)
(出典:中小企業白書 2022)

脱炭素化に前向きとなる効果

第2-2-145図は、脱炭素化の取組を実施する予定がない企業について、どのような効果があれば脱炭素化の取組を前向きに検討するかを確認したものである。これを見ると、「顧客からの評価向上」の回答割合が最も高くなっており、次いで「コストカット」の回答割合が高くなっていることが分かる。

(出典:中小企業白書 2022)

脱炭素化を進めることによる効果

続いて、第2-2-146図は脱炭素化を進めることによる効果を確認したものである。これを見ると、「光熱費・燃料費の低減」の割合が最も高く、次いで「市場での競争力の強化」の割合が高くなっている。第2-2-145図で、前向きとなる効果として挙げられていたコスト削減や自社の企業価値を高める効果を、実際に脱炭素化の取組を行うことで感じている企業が多くいることからも、現状脱炭素化に向けた取組を実施する予定はない企業においても、脱炭素化に向けた取組を実施していくことは有効であるといえよう。

(出典:中小企業白書 2022)
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