【保存版④】2022年版中小企業白書の統計データを抜粋してみた(原油・原材料価格の高騰編)

統計・調査記事
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毎年、経済産業省中小企業庁から発行される中小企業白書。2022年版の白書は表紙から参考文献などを含めると590ページに及ぶ。そこで、製造業に関係する統計データを、製造業に関係する者が参考にしやすいように抜粋して、数回に分けて紹介する。第4回目は原油・原材料価格の高騰についてまとめた。

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【保存版①】2022年版中小企業白書の統計データを抜粋してみた(国内経済の現状編)
【保存版②】2022年版中小企業白書の統計データを抜粋してみた(中小企業事業者の現状編)
【保存版③】2022年版中小企業白書の統計データを抜粋してみた(雇用の動向編)

「中小企業白書 2022」の全文はこちら

※以下、本文中の文章は「中小企業白書 2022」から一部抜粋したもの。
※本記事の図はすべて「中小企業白書 2022」から抜粋しているが、元データの参照元は図表内に記載されている。

原油先物取引の価格推移

日本経済は国内だけでなく、経済活動のグローバル化に伴い国境を越えてサプライチェーンが構築されているため、国内外で発生する多様なリスクの影響はサプライチェーンを通じて直接的又は間接的に受けうる状況にある。足元では、感染症の流行に加え、ウクライナ情勢の緊迫化などの地政学リスクが高まっている中、燃料や非鉄金属などの取引価格が大きく変動している。このため、まずは国内企業物価や輸入物価に影響を与える国際商品市況の動向を概観する。第1-1-52図は、原油先物取引の価格の推移であるが、2020年4月頃に感染症の流行に伴う経済活動の停滞により大幅に低下したのち、上昇傾向に転じた。その後、上昇の傾向が続き、22年2月下旬頃からその増加幅が更に大きくなった。3月上旬に一度低下に転じるもその後は再び増加傾向に戻った。

(出典:中小企業白書 2022)

天然ガス先物取引の価格推移

原油と並んで代表的な化石燃料である天然ガスの先物取引価格について見ると、21年後半から価格が上昇したが、主要調達先であるロシアからの供給不足が懸念される中で、3月上旬には1メガワット時当たり200 ユーロを超える水準を記録した(第1-1-53図)。

(出典:中小企業白書 2022)

アルミニウム先物取引の価格推移

非鉄金属の先物取引価格について確認する。第1-1-54図は、アルミニウム先物取引の価格の推移であるが、20年5月頃から価格が上昇し、22年2月下旬頃にその上昇幅が更に大きくなった。3月上旬に一度低下に転じるもその後は再び上昇傾向に戻った。

(出典:中小企業白書 2022)

銅先物取引の価格推移

銅先物取引の価格についても2020年3月頃から価格が上昇したのち、高止まりが続いている(第1-1-55図)。

(出典:中小企業白書 2022)

原油等の輸入価格が1 割上昇した場合の産出価格の上昇率(上位10 部門)

資源価格の高騰が続けば、資源を材料として使用する業種から影響が生じることが考えられる。第1-1-56図は、産業連関表を用いて、原油・石炭・天然ガス部門の輸入価格が10%上昇した場合に、各部門の産出(販売)価格が何%上昇するか試算を行ったものである。これを見ると、石油・石炭製品部門では6.1%、電力・ガス・熱供給部門では3.6%と、原油・石炭・天然ガスの投入が多い部門において産出価格が特に上昇する。また、鉄鋼部門では0.7%、運輸・郵便部門では0.6%となっているが、石油・石炭製品の価格上昇に伴って、間接的な費用が増加することで産出価格の上昇につながっている。

(出典:中小企業白書 2022)

価格上昇率が高い商品の生産に従事する中小企業の企業数、従業者数、付加価値額

第1-1-57図は、これらの産出価格の上昇率の高い部門に対応する中小企業について、中小企業全体における、企業数、従業者数及び付加価値額の割合を示したものである。これを見ると、上位10部門に対応する中小企業が、中小企業全体に占める割合は、従業者数で12.5%、付加価値額で15.1%となっていることが分かる。

(出典:中小企業白書 2022)

国内企業物価指数と消費者物価指数の推移

国内企業物価指数及び消費者物価指数の動向を確認する。国内企業物価指数は、生産者の出荷又は卸売段階における財の物価の動きを、消費者物価指数は、小売段階の物価の動きを反映する指標として、それぞれの動向が注目されるが、国内企業物価指数は20年12月から、消費者物価指数は21年1月から上昇傾向に転じた。また、21年以降におけるそれぞれの物価指数の推移を見ると、国内企業物価指数が消費者物価指数の変化を上回って急激に上昇している(第1-1-60図)。

(出典:中小企業白書 2022)

原油・石油製品の仕入価格の変化

第1-1-62図は、(株)日本政策金融公庫総合研究所が実施したアンケート調査による原油・石油製品の仕入価格の変化を示したものであるが、約7割の中小企業が3か月前と比較して仕入価格が上昇していると回答している。

(出典:中小企業白書 2022)

価格上昇分の製品等価格への転嫁

第1-1-63図は原油・石油製品の価格高騰によるコスト上昇分を自社の製品・サービスの価格にどれだけ転嫁できているかの分布を示したものであるが、全く転嫁できていないとする割合は全体の約7割を占める。

(出典:中小企業白書 2022)

価格転嫁の見通しと困難な理由

こうした中で、今後の価格転嫁の見通しについて「転嫁は困難」「転嫁はやや困難」を選んだ割合が9割にも上る(第1-1-64図)。価格転嫁が困難な理由については、「販売先との交渉が困難」(63.4%)、「市場での競争が激しい」(52.4%)の順で割合が高い(第1-1-65図)。

(出典:中小企業白書 2022)
(出典:中小企業白書 2022)
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