中小企業で事業領域を見直した企業は4割弱に留まる結果に(2022年版中小企業白書の統計データを抜粋してみた㉒)

統計・調査記事
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毎年、経済産業省中小企業庁から発行される中小企業白書。2022年版の白書は表紙から参考文献などを含めると590ページに及ぶ。そこで、統計データを、製造業を中心に中小企業に関係する者が参考にしやすいように抜粋して、回数を分けて紹介する。第22回目は事業領域の見直しについてまとめた。
※ここでいう事業領域とは「どのような顧客に、どのような価値を、どのような技術によって提供するのかで定まる、事業を行う領域のこと」を指す。

【ユニークアイズサマリー】今回は事業領域の見直しについてである。過去に事業領域の見直しを経験した企業は36%だった。見直しをした時期は、リーマン・ショック(2008年)や東日本大震災(2011年)、新型コロナウイルス感染症拡大(2020年)を契機としている企業が多い。さらに見直し時に重視したことは「既存事業の技術・ノウハウがいかされる」の回答割合が最も高く、次に「市場規模が大きい・市場規模の成長性が見込まれる」の回答割合が高かった。

新型コロナウイルス感染症が拡大し始めた2020年4月に、就任したばかりの製造業の社長を筆者が取材した時、「景気が良い時期だと悪さ加減に気付かず、改革を進めることが難しい。今だからこそ思い切った改革ができる」と話していた。その会社は今は新規事業にも力を入れている。
本筋とは話がずれるが、外部要因によるいわゆる経済ショックを契機に事業領域を見直すことは、逆に内・外部からの承認が得やすいという側面もある。

※以下、本文中の文章は「中小企業白書 2022」から一部抜粋したもの。
※本記事の図はすべて「中小企業白書 2022」から抜粋しているが、元データの参照元は図表内に記載されている。

事業領域の見直した経験の有無

自社を取り巻く事業環境の変化によっては会社の存続基盤である競争優位が毀損し、現状の事業領域の見直しを迫られることもある。ここでは、事業領域の見直し状況について確認していく。第2-2-86図は、過去に事業領域の見直し経験があるかを確認したものである。見直しを経験した企業は36.0%であり、64.0%の企業が自社の事業領域を見直したことがないことが分かる。

(出典:中小企業白書 2022)

事業領域を見直した時期

続いて、過去に事業領域を見直した経験があると回答した企業について、見直した時期を確認したものが第2-2-87図である。これを見ると、リーマン・ショックや東日本大震災、新型コロナウイルス感染症拡大を契機としている企業が多いことが分かる35。経済ショックなどが起こった際には、売上げ、利益の減少や、サプライチェーンへの影響といった企業の事業継続に係る影響が生じることから、事業領域の見直しを迫られたものと推察される。

(出典:中小企業白書 2022)

事業領域の⾒直し経験の有無別に⾒た、事業環境の情報収集・分析状況

続いて、事業領域を見直した経験別に、事業環境の分析状況について確認する。第2-2-88図を見ると、事業領域を見直した経験がある企業は、見直した経験がない企業と比較して、各項目において分析を行い、経営戦略に反映させている「全て経営戦略に反映させている」企業及び「全て少なくとも分析を行っている」企業の割合が高い傾向にあることが分かる。

(出典:中小企業白書 2022)

事業領域見直し時に重視した点

第2-2-89図は過去に事業領域を見直した経験がある企業について、事業領域の見直し時に何を重視したかを確認したものである。「既存事業の技術・ノウハウがいかされる」の回答割合が最も高く、次に「市場規模が大きい・市場規模の成長性が見込まれる」の回答割合が高くなっていることが分かる。現在の事業領域の見直しが必要と考えている企業においては、こうした項目を意識して、自社を取り巻く事業環境の分析を行うことが有効といえよう。

(出典:中小企業白書 2022)
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